府民は顧客?

自治体を民間企業と同じように再編

府職労自治研集会分科会より

 知事は、メルマガ「なび」第8号(7月14日)で、「再建から改革へ、改革からビジョン・経営へ」との見出しで、次のように語っています。「アクションプランによる課題に結びついた実践的PDCAサイクルの構築などによる『事業の改革』、広域振興局再編などの『組織改革』、そして経営品質のように府民第一という『意識改革』などをすすめてきました。そして今、私たちは、再建の土台にたって、改革の歩みを緩めることなく、次のステージに進まなければならない」と。いま、「京都府を経営体、府民を有権者としてではなく顧客と見なす」府政再編、「経営改革プラン」の本格化の動きが強まっています。7月9日に行われた府職労自治研集会から第1分科会における議論を紹介します。

    行政スリム化の道具としてのNPM

 第1分科会では、「自治体行政のアウトソーシングに立ち向かう」というテーマで討論が行われました。 経済のグローバル化に伴い、日本でも90年代の終わり頃から「新自由主義的構造改革」が推進され、公の業務を「官から民へ」「国から地方へ」と移すことを基本にした、「21世紀型の行政システム」づくりが着々と進められてきました。 「地方分権」「三位一体改革」などにより、財源保障がないままに国の仕事を押し付けられてきた地方自治体は、必然的に行政のスリム化を迫られ、ニュー・パブリック・マネージメント(NPM)を理論的な柱にした改革を行ってきました。これは、自治体を民間企業と同じように考え、住民は顧客、人件費はコストであるとして、コストを削減して価格に見合った品質のサービス提供をめざす新自由主義的な行政経営手法です。そして、公務のアウトソーシングや民営化はNPMの重要な方法と位置付けられてきました。現在京都府において進められている「経営改革プラン」も、まさにこうした考え方に沿ったものということができます。

    「経営最優先」がもたらす数々の弊害

 分科会では、府政のアウトソーシング手法として現在問題になっている、府立大学の地方独立行政法人化や公の施設の指定管理者問題などについて、この間の職場での運動を踏まえたレポート報告がありました。 たとえば、04年度から法人化を行った国立大学では、運営交付金が毎年減らされることにより研究・教育環境が財政的に圧迫され、教員が外部資金の獲得に走らざるを得なくなって「儲かる研究」ばかりが評価されたり、年度計画の策定などによる事務量増加や任期制導入により教員のメンタルヘルス問題が深刻化している実態が報告されています。また、学生にとっても授業料の値上げや教育の質の低下が心配されるなど、「経営最優先」のもたらす弊害が指摘されています。府立大学でもこの間、すべての学部の教員会議において法人化に対する不安・反対が多数を占めています。しかし大学当局は、「法人化については知事が決めること」とし、経営改革プランのもとでは大学の意見が設置者に届きにくい現状を語っています。

   ネライは「公の市場」の民間開放

 また、指定管理者問題に関わっては、働く場がなくなってしまうのではという不安とたたかいながら、よりよい府民サービスを行うために「公の施設はどうあるべきか」を職場で議論してきた経験なども報告されました。
 参加者による自由討論では、日本におけるアウトソーシングの狙いとして、単純に財政問題だけでなく50兆円ともいわれる「公の市場」を民間に開放することがあると、小泉「構造改革」の狙いをズバリ指摘されていたのが印象的でした。

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