中・高一貫教育を考える   
 来年4月から京都では、府立洛北高校と京都市立西京高校に中学校が併設されることになりました。府職労教育支部では、日刊「おはよう」で話題にしてきました。二つの意見を紹介します。参考にしてください。
 
選抜でなく望むものだれもが学べる中・高一貫教育を

 洛北高校の説明会には約5000人が集まったようです。保護者や関係者に関心のあった入学選抜方法は、面接・作文・製作、調査書、抽選を用いて行われるとのことです。実施日は平成16年1月31日(土)。募集定数は1学年2学級80人。
 わが子の行く学校の保護者と話をしていると、「高校受験で苦労せず、クラブ活動等6年間思い切ってやれるのはいいね」「わが子も通わしたいけど、どうせ選抜で優秀な子しかあかんのやろ」「でも、受験がないんやったら、可能性もあるかも」「そんな可能性、ない、ない」等の話が出ていました。
 私自身、中高一貫教育は賛成で、ホームページにもあるように「高校入学選抜に費やされる時間をゆとりと深みのある学習に充てることができ、6年間一貫した指導により個性や能力の伸張を図る」という点では、特定の生徒のものとせず、全府的な普及を図っていくべきと考える。
 普及を図っていく場合、高校に新たな中学校施設の併設でなくても、各地域の中学校と高校の教育プログラムや行事、教師集団の連携などを図り、高校入学で分断される弊害を実践的に克服するようなやり方について、発想を柔軟に考えたいものです。
 府教委教育ビジョンには「中高一貫教育にあたっては・・・受験競争の低年齢化を招かないよう配慮します」と触れられています。 思えば、かつて私が経験した京都の小学区制は、高校入試の時間をいまのように費やしたわけでなく、地域のあの高校に行くことを頭にイメージして中学校を過ごしました。教育内容や中・高の連携がどれだけ取れていたかわかりませんが、地域をベースにした中・高の一貫教育、望むものだれもが学べるものとして模索していってほしてと思います。
                        教育支部・Yさん
    

「できる子」だけを入学させることにならないか

 中高一貫校の府立洛北中学校の説明会に5千人の参加者があったという。それにしてもすごい人数。「関心が高い」のは事実、定員が80人であることも事実。 保護者としては「どんな学校なんだろう」「どうしたら入れるんだろう」と思うのも当然のこと。今回の説明を聞いて参加者はどう思われたのだろう。「うちの子を絶対入学させたい」と思われたのだろうか、「選抜試験がなくても無理だろうなぁ」と思われただろうか。そのようにいろいろ思うことだけで、かなりの精神的負担だなぁ、と思うのだが。
 入学試験による選抜でなく、「小学校の内申と作文」「面接」で選考するとしても、「躓きのある子を6年間でゆっくり学力をつける」「不登校傾向のある子も在籍できる」などの方針がしめされないと、やはり小学校6年段階で「できる子」だけを選んで入学させることにならないのか。それは低学年からの「過度な競争教育」を助長することになるのではないか。といろいろ心配になる。
 「親がしてやれることは、せめて競争に負けず、いいといわれる学校に入れてやれること」と考えて、塾や「いい学校」探しにアンテナをはり、小学校から大人より忙しい生活をさせ、教育費を用意することに専心する状況がさらに強くなるのではないか。
 行政は、そのような心理を増幅させるようなやり方ではなく、明治以来の京都の先人の教育への思いに学び、「確かな学力を人権としてどう保障するのか」について、父母・府民・教職員と十分な議論をしながら、必要な条件整備をしてほしい。「中高一貫が望ましい教育制度」であるなら、全体に広げる道筋も示すべきでは、と思うのです。教育支部・Tさん