鳥インフルエンザで知事に公開質問状

 「国防」という本が、最近刊行されました。著者は、前防衛庁長官・石破茂氏。この本に、昨年の鳥インフルエンザにおいて京都府が自衛隊の出動要請した顛末が記述されています。その中身に、日夜、献身的に事態の打開に努めてきた職員、府職労として黙っていられない記述があり、6月1日、職員長に知事宛の公開状質問を提出しました。職員長は「事実がどうであったのか、調査して明らかにしたい」と回答しました。  

公開質問状

京都府の危機管理能力、その責任の根幹を問う

−高病原性鳥インフルエンザの自衛隊要請と府職員の職務に関わって−

              京都府知事 山田 啓二 様
                                    2005年6月1日

                                        京都府職員労働組合    
                                          執行委員長 佐井 惇   

 先般、発刊された前防衛庁長官・石破 茂氏著書の『国防(こくぼう)』(新潮社刊)によれば、昨年2月に発生した京都での高病原性鳥インフルエンザの対応における「自衛隊の緊急出動」についての「顛末」が書かれています。
 前防衛庁長官・石破氏は、「はじめに」の箇所で「防衛庁長官、つまり大臣でいる間は政府の一員です。時に、政府の見解が、それまでの私の考え方と違うこともありました。しかしいくら異なる意見を持っていても、大臣としてそれは言えません。また、聞かれても黙っていなくてはいけない場面もたくさんありました。言っていいこと悪いことを『線引き』せざるを得ませんでした。」と、述懐し、第8章の「自衛隊の緊急出動」の箇所で「鳥インフルエンザ秘話」として、次のように記述されています。

 「鳥インフルエンザでは、自治体の方からは、『自衛隊が出てくれ、頼むよ』と拝むような感じで要請が来ました。…
 (中略)
 このとき、京都府からは『これが最後です、もうこれ以上やってくれなんて言いませ ん』という話でした。それで訓練として吹雪の中出動させ、消毒作業をしてもらったわ けです。ところが次の日になって、また京都府が、『やっぱり鶏をビニール袋に入れてください。鶏を廃棄する穴も掘ってください』と言ってきました。
 『なんだそれは?あれで終わりだって言ったじゃないか!』
 『いやいやしかし、ここだけの話、まあ、聞いて下さい』と向うは説明を始めます。
要するに、誰もその作業をやりたがらないというのです。『四十代、五十代の管理職が駆り出されて手伝わされていましたが、おじさんだからくたびれてしまう。みんな倒れてしまってもうできないと言うわけです。若い人がやればいいようなものですが、それもなかなか難しい。そして、民間の業者もみなやりたがらない』といいます。」

 しかし、当時の鳥インフルエンザに対応して、寝食を忘れ、昼夜分かたず対応に追われた現地の職員、そして、現地以外からも200名にも及ぶ連日の動員体制で鶏の殺処分がおこなわれたこと、また、それは、自衛隊が「出動される以前も」、「出動した時」も、『帰った後』の最終の「卵・鶏フンの処理」等まで職員の動員が及んだこと、など、府の関係者なら周知の事実です。
 ここで書かれている石破氏の『ここだけの話、まあ、聞いて下さい』との記述は、当時の経過からも、当事者しか知り得ない真実であることは間違いありません。そして、石破氏がいう『向うは説明を始めます』の『向う』というのは、京都府の説明です。当時、府民の安全を守る立場に立って、事態の打開・解決へ努力してきた職員団体として、看過できない内容の『説明』であり、府民をはじめ、日夜、献身的に事態の打開に努めてきた職員を愚弄する『説明』以外の何ものでもありません。
 以下の項目の質問について、京都府当局の責任ある、誠意ある回答を求めます。
なお、この質問状については、府職員の誇りにかけてマスコミも含めて公開することを付言します。

                    記

1.石破氏が記述しているように、自衛隊の「出動要請」にあたり、京都府の状況を「説明」したのは誰か。明らかにすること。

2.石破氏が記述している内容は事実なのか、どうなのか。事実と違うなら、どこが違うのか、当時のやりとりを具体的に明らかにすること。

3.記述では、管理職のみが対応し、「四十代、五十代の管理職が駆り出されて手伝わされていましたが、おじさんだからくたびれてしまう。みんな倒れてしまってもうできない」というのは、事実と異なると考えるが、明らかにすること。

4.「若い人がやればいいようなものですが、それもなかなか難しい。」とあるが、動員の条件に該当しない職員を除き、『若い人』をはじめ、動員を要請されて、多くの職員が、参加しました。しかも、それは、自衛隊の「出動前も」、「出動時」も、『帰った後』も、参加していたのが事実である。このことを改めて明らかにすること。

5.事実と異なる内容で、自衛隊の出動要請を行ったということになれば、事態は深刻である。緊急事態の中での事実の詐称は、「虚偽の要請」ということになるが、どう考え るのか。明らかにすること。

6.私たちは、必要ないと主張したが、府知事は「若い人」も含め、動員された職員に「感謝状」を出している。一方で、著しく事実と違う『説明』が行われていたとすれば、由々しき問題である。どのように対応されるのか、明らかにすること。
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