年間3万人を超す自殺者、中小企業の倒産、若者の就職難と低賃金・無権利、生活保護世帯の増。その一方で大企業は空前の儲けで貯めこんだお金は83兆円(金融業除く)。小泉「構造改革」で府民のくらしと営業は?実態を取材しました。


 

3年間で8千件減少
 「京都は伝統産業の町、中小企業の町。この町を守り発展させたいが、このままでは守れない、衰退していく」と話すのは伊藤紋匠社長の伊藤邦雄さん(京商連会長)。
 結婚と同時に脱サラし、この業界に足を踏み入れ、紋章の伝統工芸を守り発展させてきました。室町の和装業界のなかで、悉皆という和装流通が消え仕立て屋が消費者と職人を結んでいく流通へと変わるなか、本物志向を崩さずうまく機械化も取り入れながら、全国からの仕事をこなしています。

 ピーク時には1千6百万反が流通していた和装業界も、その5%に過ぎない80万反となったいま、紋章の加工賃も20年前の3分の1である1、000円へと激減しました。また、「高齢化と後継者問題が大きな課題」と伊藤さんは語ります。
 さらに、免税点が年間売り上げ3千万円から1千万円に引き下げられた消費税の納税期を来年3月に控え、「いくらくらいの消費税額になるか不安がいっぱいだったり、払えない業者も出てくるのではないか」と心配します。

 04年、京都府の事業所数は3年前と比べ、約8千件(5・8%)減少し、90年代後半の減少率を上回りました。こうしたもとで、製造業事業所のうち4割を占める繊維工業をとりまく環境は厳しいものがあります。03年の繊維製品の出荷額は5年前と比べ、42%も減少しています。
 京都府内で3万人以上が働き、経済と雇用を支えている和装伝統産業にかかる府予算(05年度)は、総額でも2・2億円と4年前の67%に減少しています。一方で、不況のもとでも利益をあげ、体力もある大企業には05年度から府の企業誘致補助金の対象を広げ、1社あたり最大で、従来の5億円から20億円へと上限を引き上げています。

 京都府の地方機関再編と同時に、融資のシステムも大きく変更になりました。各振興局の窓口は無くなり、今は金融機関のみが窓口です。新たな融資については、「融資の申請書を受け取るのさえ困難という事業所・事業者まで生まれている」と伊藤さん。
 「次世代の業者育成のためにも、開業資金・運転資金を公的制度でもっと支援してほしい」と語ります。

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