年間3万人を超す自殺者、中小企業の倒産、若者の就職難と低賃金・無権利、生活保護世帯の増。その一方で大企業は空前の儲けで貯めこんだお金は83兆円(金融業除く)。小泉「構造改革」で府民のくらしと営業は?実態を取材しました。


 
病院窓口で支払えぬ患者さん急増
 
 国民健康保険は、京都市民50万7千人が加入、その7割が非課税世帯であり、低所得者が大部分を占めています。京都市は昨年、国保料の算定方法を変更し、保険料を大幅に引き上げました。そのため病気になっても病院に行けない、病院に行くと重症になっていて即入院というケースが増えています。
 吉祥院病院では、医療費を支払えない患者さんをサポートするシステムがあり、担当のSさんはテンテコ舞の状態。福祉事務所に行ったり、患者宅を訪問したり多忙な毎日を過ごしています。
 最近、こんなことがありました。
 夫が、もともと足が悪く家で転倒、2日間様子を見ていましたが、息をしても胸が痛いというので、病院へ行くことに。ところがお金がないので妻と息子が付き添って1時間も歩いて病院へ。聞いてみると収入は、夫が68歳、厚生年金・17万円。妻は62歳で清掃のアルバイト5万円。息子は39歳の次男で失業中。240万円の借金があり、年金が入った月に20万円の返済、さらに長男への借金7万円の返済、妻のアルバイト料で何とか生活し、国保料は3年間滞納。
 無料低額診療願の申請をすると福祉医療の手続きで薬代1割負担の制度があることを説明。妻と申請に行く途中、事情を聴くとその人は糖尿病が進行し「体重が58キロあったのが、30キロになった」という。急いで受診すると「即入院」との診断。入院費がなく、自宅でインシュリン摂取をすることに。
 似たような事例は多い。
 夫は日雇い、奥さんはアルバイト。50歳代。収入は、奥さんのアルバイト料。夫は、日雇いのため毎日収入があるわけではない。その中から国保料の支払い。しかし、分納しているため医療費の一部負担金免除制度が受けられない。奥さんは喘息、薬代が払えない。トコロテンを食べたところ、一週間ほど消化せず、病院に来る。医師の診断は、胃がんで、即入院。発見が比較的早かったため手術治療で退院。
 近所から、部屋が臭いとの通報で出かけると、オムツがいっぱい詰まった12個のゴミ袋(2部屋分)が山となっていた。半分寝たきりで、オムツと酒だけは買いに行く。療養型の病院に入院。生活保護を受けない限り、入院費を払えない。ローンが残っており、生活保護が受けられない独居老人。
 行き倒れ状態のホームレス、貧困化と病気の重症化が進む高齢者や低所得層。病院の窓口や狭い範囲の情報提供でしか対応できないもどかしさを感じながらSさんのサポートはつづきます。

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