なぜ耐震偽造問題は起こったのか

真相をさぐるシンポジウム開催

行政の役割と責任の再検討を求める声

 2月25日、自治労連や自治体問題研究所など実行委員会がシンポジウム「なぜ耐震強度偽装はおこったのか」を開催、建関係者や市民等80名が参加しました。
 日経アーキテクチャー副編集長・高津尚悟氏は同社が取り組んだ建築士への「緊急アンケート」の特徴を紹介。
 「構造設計士は事実上下請け的存在におかれ、一億円のビルで6〜700万円の設計料の内15〜20%前後の収入。建築主の権限が強すぎて下請けの建築士は発注者の声に対抗しきれない状況にある。『スピードと経済設計』が要求されるこの時代に、大変重要な仕事にかかわらず、厳しい条件に置かれている。行政の専門家でも現実的には『偽装』発見は難しいのではないか」「確認検査制度の抜本的な改正を求める声が多い」と報告。
 欠陥住宅問題を取り組んできた飯田昭弁護士は「民間に確認審査が委託されたために、情報公開の対象にならず、住民に秘匿されたまま強引に開発・建築が進められている」「デべーロッパーが、建築士を抱え込んでおり、設計・施行・管理でチェックが働かない」など、船岡山マンション問題の具体例もひきながら説明。
 京都市職労副委員長・宮内尚志氏は「民間指定確認検査がスタート以降職員が減らされ、構造担当も廃止されている」ことを報告しました。
 参加者からも、京都の建築関係者におこなったアンケート結果を報告、マンション関係での取り組み、行政の社会的責任、建築士の倫理綱領作成、の提案などの発言がありました。
 府職労は、「構造計算書偽造問題を考える会」が取り組んできたアンケートに協力してきました。アンケートには建築設計事務所関係者、建設業関係者、国土交通省職員、地方公務員など151人が回答。
 回答者の声の一部を紹介すると・・・
 「氷山の一角が出ただけで、施行の手抜きなどを含めまだまだ出て来てもおかしくはない」(発注者)「起こるべくして起こったことだと思います。確認の民間委託、設計者の地位の低さ、もうけ最優先の社会」(設計事務所) 
 まとめで日本福祉大教授・片方信也氏は「九八年の確認検査の民間開放が大きな契機となった。行政の体制にも見逃しの原因がある。建築基本法を創設し、人々にとって建築とは何か、建築行政の役割は。など基本的な考え方を明確にする必要がある」ことを強調しました。

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