あったかい介護がしたいのに

社会福祉の現場から

「助けが必要な方に手を貸してあげられることが一番の喜び」
 そう語るのは、京都市内のホームヘルプステーションで働くHさん(22歳)です。Hさんは現在、ダウン症や自閉症などの子どもたちから、知的障害をもつお年寄りまでが利用するヘルプステーションでヘルパーとして働いています。「毎日、少しづつでも利用者のみなさんの成長≠ェ見られるのが何よりうれしい」とも語ります。
 しかし、介護の現場は過酷な労働環境にあります。以前、Hさんが1年半の間、勤務していた特別養護老人ホームでは、介護の専門学校で学び実践しようと考えていた「利用者の尊重」「利用者とのコミュニケーション」を実現しにくい現状がありました。

 
正職員3割、非生職7割 超勤は未払い

 正規職員が3割、パート職員を含めた非正規労働者が7割という構成のなか、正規職員は夕方4時からの夜勤で翌朝の9時半まで勤務し、引き続き残業≠ナ夕方の4時まで働くというのもザラだったといいます。 しかも年間で「300万円から400万円にはなるだろう」と見込まれる残業℃闢魔ヘ一切、支給されませんでした。
 こうしたなか、時給830円、1日8時間のパート職員として働いていたHさんも、たとえば通常は2人1組で行うこととなっている利用者20名を対象とした「オムツ交換」を1人で行わざるを得ないこともたびたびで、数時間たっても仕事が終わらないばかりか、「腰痛予防のためのコルセットも効かないほどの重労働」だったといいます。
 そんななかでもHさんは、できるだけ利用者の方に声かけをしながらの介助を心がけていましたが、他の職員がみな黙々と無口で入所者に接しているのをみて、「自分の介護は間違っているのか…」と悩んだといいます。しかし、あるときベテランのパート職員からの<Rミュニケーションをとりつつ行うあなたの介助は私のお手本との言葉に、「すごく救われた」といいます。

 
自立支援法で利用者と経営者から悲鳴

 「職員自身が人間らしい働き方ができていない職場で、人間を大切する仕事はできません。現場の困難に流されずに、介護の理念を忘れず仕事をしていきたい」Hさんは語ります。
 この4月からは障害者自立支援法が施行され、Hさんが働くホームヘルプステーションでも、これまで0円だった利用者の月額負担金が1万円もしくは2万円に、これまで月額1万円だった利用者の負担金が2万円もしくは3万円へと軒並み増大することが分かり、「利用者はみんな悲鳴をあげ、事業所も経営面での大変な危機感を感じている」といいます。
 「障害者や高齢者、社会的に立場の弱い人たちが人間らしく生きる権利を。そのためにも社会保障費の削減ではなく、充実を」
Hさんの願いです。 

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