首長や議員が経営する企業の指定するな

施設の公共性守るとりくみ大切

指定管理者制度導入・全国でのとりくみ

 2003年地方自治法改正により指定管理者制度が施行されて1年6ヵ月が経過しました。従前の管理委託制度は2006年9月で失効し、来年3月末までに直営に戻さない限り、指定管理者制度への切り替えが義務付けられています。またほとんどの自治体では、現に管理委託されている施設だけでなく、直営施設についても、民間譲渡もしくは指定管理者制度適用に向けた洗い直しが行われています。いま、住民とともに施設の公共性を守り拡充させる課題と、施設で働く職員の雇用と労働条件を守ることが大事になっています。
 
 首長や議員等が経営する法人の参入を制限する条例制定ふえる
 
 首長や議員等が経営する法人の参入の規制については、指定管理者の指定における公正を期するため、必要なことです。
 すでに三重県総合文化センター条例にも規定されており、埼玉県和光市や東京都千代田区・多摩区などでも条例化されるなど全国に広がっています。とりわけ、多摩市の条例は市議会議員や市長、助役、収入役、教育委員会委員のみならず、その配偶者もしくは二親等以内の親族も指定管理者の指定申請ができないとしており、より踏み込んだものとなっています。
 鳥取県では、県会議員が手広く経営する社会福祉施設が各地域にあり、その法人が指定管理者に参入する可能性があるとして、条例で参入を制限するために2月議会で条例化することを片山知事が明らかにしました。知事は議会で「受託を申請する側と認定する側が一致するのは好ましくない」と明確な姿勢を示しました。
 毎日新聞は、総務省の話として「条例に盛り込むのは聞いたことがない。不透明な部分をなくそうとする優れた方針だ」と報道しています。これは自治労連鳥取厚職労などが利用者・家族などとの共同で運動を進め、県民世論を培ってきた反映でもあります。
 この2月、3月の地方議会では軒並み指定管理者制度の条例改正が行われます。自治労連の条例対置案や14のチェックポイントなどを活用し、他の課題と併せて取り組みを強め、公正、客観的な制度運用、利用者・住民、そこで働く公務公共関連の労働者の立場にたった条例を実現させていくことが求められています。
 
 市営住宅の管理に指定管理者制度を導入する方針を表明
 
 横浜市は1月27日、市営住宅に指定管理者制度を導入することを明らかにしました。具体的には、「05年度中に指定管理者を公募・選考し、06年度から試行、09年度から本格実施をめざす。民間事業者の参入が可能となるため、個人情報の保護が課題となりそうだ」(朝日)と報道されています。横浜市には約3万戸の市営住宅があり、現在は横浜市住宅供給公社が受託・管理しています。
 公営住宅については、昨年3月31日付で国土交通省住宅局から通知が出され、「公営住宅は公の施設に該当し、管理の委任についても入居者のプライバシー保護に十分配慮したうえ、指定管理者制度に基づき行うことができる」としました。しかしその範囲は、「公営住宅法上事業主体が行うこととされている管理に関する事務のうち、入居者の募集や収入審査など及び修繕、清掃などの事実行為について管理委託制度により委託している事務など」と限定し、かつ「住宅困窮度に応じた優先入居の実施や地域の実情や居住者の状況に応じた適切な家賃設定など、公平な住宅政策の観点から行政主体としての判断が必要である」ため、入居の決定、家賃の設定は範囲外とされています。また、「これまでも事業主体が行ってきた家賃収入の収受は、指定管理者がすることは適切ではないが、家賃徴収などの事務を委任することは差し支えない」としています。 しかし公営住宅は、その性格上、入居者の生活や人権、プライバシー保護と深く結びついており、既に議会で論戦が始まっています。市当局は「指定管理者の管理する業務は、苦情相談や料金徴収、設備管理など」とし、プライバシー保護も「外部接続できない電算システムを導入し、IDやパスワードの使用、情報の暗号化、記録媒体への書き込み対策を徹底する」と回答していますが、十分な検証と入居者・住宅供給公社労働者等からの要求集約、共同の取り組みが必要です。
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