(学習討議資料)
  
  公務を民間に丸投げする「公の施設の

 指定管理者制度」にどうたち向うか
                      
            04年1月 京都府職員労働組合

 保育所や体育館、植物園、図書館、病院など、自治体の多くの公的施設は、これまで「直営」か「政令等で定める公共的団体」に限定して管理運営されていました。しかし政府・総務省は昨年6月に地方自治法の一部を改正して、指定管理者制度を導入し、公的施設の管理・運営に株式会社などの民間事業者が参入できるようにしました。
事業団や公社・公団などの公共的団体に委託している施設は、現行の管理委託制度は廃止され、3年以内に指定管理者制度に移行することになります。また、現在「直営」の施設も、指定管理者制度でできないか、当局として検討するよう指示されています。
この制度は、地方独立行政法人制度とも連動しており、総務省は「地方独立行政法人法等の公布について」の通知の中で、あえて「公の施設の指定管理者制度の活用等と比較検討し」、と述べ、どちらの手法がより適切か、よく検討して具体化をはかるよう指示しています。既設の直営の施設にあっても、「公の施設の管理状況全般について点検し、指定管理者制度を積極的に活用されるよう」指示しています(15年7月17日:総務省自治行政局長通知)。
まさに、自治体が本来行うべき業務のうち、特定分野(許認可・規制関係)以外は、公務を丸ごと民営化・民間委託するという「構造改革路線」を具体化する究極の自治体リストラ、公務の外部委託化の徹底、地方自治・自治体のありかたを変質・解体するものです。
指定管理者制度が、府政と府民の暮しをどう変質させようとするのか、職場と仕事をどう変えようとするのか、府職労としてどう立ち向かうのか、大いに議論しましょう。
Q:「公の施設の指定管理者制度」とは何ですか?
A:自治体リストラの一環として、新たにつくられた制度です

 自治体が設けている公の施設(表参照)の管理だけではなく、運営(管理代行)についても、株式会社も含めた民間事業者に任していくという制度で、地方独立行政法人、構造改革特区とならんで公務を民間に丸投げする手法のひとつです。
「公の施設」とは、地方自治法で「住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための       施設」とされており、新地方自治ハンドブックによると主なものは次のとおりです。
  民生施設:保育所、母子寮、養護老人ホーム、老人福祉センター、福祉会館、児童館など
  衛生施設:し尿処理施設、ごみ処理施設、下水終末処理場、健康センターなど
  体育施設:体育館、陸上競技場、プール、野球場、武道館、キャンプ場など
  社会教育施設:公民館、青年の家・自然の家、図書館、博物館、資料館など
  公園 :公園、児童公園など
  会館 :市民会館・公会堂、文化センター、勤労会館、婦人会館など
  診療施設:病院、診療所など
< ただし、「個別法」で管理をうたっている場合は、適用対象外となります>
Q:「指定管理者制度」とこれまでの「管理委託制度」とどう違うのです?
A:「公の施設の管理・運営」に株式会社も含めた民間参入が可能となります

 いちばん違うのは、「公の施設の管理・運営」に株式会社を含めた民間参入が可能となることです。これまで管理委託者になれるのは、公共団体(土地改良区、水害予防組合などの公法人のこと)、公共的団体(農協や商工会議所等の産業経済団体、老人ホーム、育児院、赤十字社等の厚生社会事業団、青年団や婦人会などの文化事業団体等公共的な活動を行うもの)及び自治体が50パーセント以上出資する法人などに限定され、具体的な管理受託者を条例で規定することを原則としていました。
 しかし今回の制度は、指定管理者の範囲について制約を設けず、株式会社などの民間事業者も議会の議決を経て指定管理者になれるものとしています。なお、この制度導入にともなって管理委託制度は廃止されます。
Q:指定管理者に任される管理・運営の中身は何ですか?
A:本来行政が行う利用許可や、一定の範囲で料金の設定も行いま  す。利潤を上乗せした利用料金を設定することが可能となると  ともに、利潤追求による「ゆがみ」がでるおそれがあります

 これまでの「管理委託制度」は、公の施設の設置者である地方自治体との契約にもとづいて具体的な管理を行うものであり、その公の施設の管理権限及び責任は、地方自治体が引き続き負うもので、公の施設の利用許可処分は委託できませんでした。
 しかし、「指定管理者制度」は、公の施設の管理に関する権限を指定管理者に委任して行わせるものであり、指定管理者は、本来行政が行う利用許可(行政処分という)も行い、一定の範囲で料金を自由に設定でき、使用料は指定管理者の収入として受け取ることになります。
 公の施設の施設及びサービスの利用料が安いことは重要なことです。あらかじめ利用料の基本的な枠組みは条例で定め、設置者である地方公共団体の承認を受けることになっていますが、利潤を上乗せした利用料金を前提として民間事業者が定めることができます。最初は安く料金を決めても、あとでそれが値上げされる心配があります。
 法では「正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない」とうたっていますが、例えば、公民館で毎年開催してきた戦争展が、右翼の妨害のおそれがあることを口実に、運営の公正さよりも警備の経費を重視して、民間業者である指定管理者によりその利用が制限されることも起こりえます。逆に、一定の目的を持って設置されている女性会館や福祉会館等が、もうけを確保するために、本来の利用目的枠をはずして誰にでも貸されるような運営が行われる可能性もありま
Q:現在、管理委託制度を採用している公的施設は、
  どのような扱いになるのですか?
A:3年の間に指定管理者制度に移行します

 指定管理者制度導入にともなって、これまでの管理委託制度は廃止されます。そのため、現在、公の施設の管理を委託している地方自治体が指定管理者制度にスムーズに移行するために、条例整備や指定管理者の選定等の準備作業が必要になるため、この度の改正法の施行以後3年の間は、従来の管理委託制度が継続できる措置が設けられました(改正法附則第2条)。
 したがって、この改正法の施行以後3年以内に、指定管理者に移行が行われます。そのとき施設の性格を考え、直営に向けて運動していくことや、これまで管理委託していた団体を指定管理者にさせていくことなどが重要になってきます。
Q:現在直営で行われている公的施設はどのような扱いになりますか?
A:指定管理者制度でできないかどうか検討します
 
 当局は、現在直営で行われている施設についても、指定管理者制度を導入することができないかどうか検討を行うと予想されます。「直営を見直す方向」での検討が強まると予想されます。
Q:住民の参加やチェックはどうなりますか?
A:的確なチェックは不可能となります
 
 今度の制度改正では、公の施設の運営への利用者・住民参加、住民監査請求を含めた運営にかかわる住民のチェックは法的にはきちんとされていません。また、指定管理者の個人情報の保護については法制度上の義務付けはなく、地方公共団体での条例化、指定管理者との協定にどう盛り込むのかの、これからの運動に委ねられています。
 指定管理者には毎年度終了後に事業報告書(管理業務の実施状況、利用状況、料金収入の実績など)の提出が義務付けられていますが、議会への報告義務はありません。また、兼業禁止規定が適用されず、設置者(首長)や議員、その親族が経営する民間等事業者が排除されないことから、腐敗・不正の温床になる可能性も危倶されます。
指定管理者に対しては、監査委員や包括外部監査人などにより出納関連事務の監査を行うことはできますが、指定管理者の管理業務そのものについては監査の対象にならないとされています。したがって、適正・公平な運営、平等利用がきちんとされているのかを的確にチェックすることはできません。
Q:職員の雇用、労働条件などに影響はありますか?
A:雇用問題や労働条件問題の影響が出ます
 
 指定管理者制度は、「公的施設の管理・運営」について、地方自治体からの「自立化」(地方公共団体の人的、物的支援の廃止含めた見直し)と連動しています。また、競争原理を重視し、入札制度に準ずるような選定方法の導入で民間事業者に大きくシフトしていくことを目的としています。したがって、事業団や公社・公団などが指定管理者に移行するにしても、非常勤職員はもちろん、正規職員の賃金、労働条件等を、これまでの「公務員に準拠する」立場をすてて大幅に引き下げられることも予想されます。また、現在管理・運営を受託している事業団、公社・公団などが指定管理者に指定されなければ、直ちに雇用問題が発生します。さらに、地方自治法では、「指定管理者の指定は、期間を定めて行うものとする」とされています。指定管理者の指定にあたり委託の期間が設定されることになり、その期間毎に競争的な指定が行われることになります。その結果、労働条件の一層の切り下げ競争が行われることも予想されます。
 また、指定管理者制度への移行により、非常勤職員を削減し、正規職員を一定の施設に寄せていき、最終的には地方独立行政法人化する可能性もあります。
 「公的施設はあくまでも住民の福祉を増進するためのもの」であり、管理・運営を安定して行うことが必要です。実績、専門性、サービスの質、継続性、安定性などが担保されること、そのための職員の身分、貸金・労働条件が確保されるが重要であり、そのためのとりくみが重要になってきます。
Q:京都府の動きはどこまですすんでいるのですか。
  府職労の今後のとりくみの方向は?
A:京都府の主体性の発揮を求め、利用者や関係住民・団体と   の共同のとりくみの展開をはかります

 京都府の場合、表だった動きは不明ですが、03年9月に公表された「京都府行財政改革指針〜かいかくナビ」では、「外郭団体の見直し(廃止・民営化)」、「公の施設の管理委託の指定管理者制度の導入を踏まえた検討」「独立行政法人化の検討」「PFI手法の導入」「適切な民間委託の推進」「府立大学のあり方検討」など、可能な限りの民営化をすすめる方向が盛り込まれています。知事は04年1月の訓辞で、「かいかくナビ」にしたがって府政改革を押し進めることを強調するとともに、「方向と手段はすでに提示している。あとは職員の行動をまつばかり」と訓辞しました。03年3月に出された「京都府の外郭団体の見直し指針」に基づく「各団体の見直し策づくり」も始まっています。
 したがって、指定管理者制度の導入めざし、「施設毎の条例改正」や「指定管理者の指定に関する条例制定」など、事態が急展開する可能性があります。

<府職労のとりくみの方向>

@指定管理者制度に関する学習運動をすすめます。
A今日の社会的、経済的状況のもと、京都府が各施設を主体的に設置、管理、運営してい くことの積極的な意義を、府民の暮し、福祉の向上の面から明らかにしていきます。
B各施設当局、京都府当局との交渉を実施し、当局の検討状況を明らかにさせるとともに、 利用者・職員の要求・利益を擁護する立場で対応するよう求めていきます。
C利用者や関係住民・団体との懇談会を行うなど、各施設が直営・公的団体によって運営 ・管理されることの重要性を府民的な世論にしていくために奮闘します。利用者や関係 住民・団体のみなさんとの共同したとりくみの展開をはかります。
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