賃金と退職手当の大幅削減

社会福祉事業団の指定管理者制度移行を機に


 現在、社会福祉施設では、指定管理者制度の導入と連動して、公的責任の受け皿として設立された社会福祉事業団の解体、社会福祉法人の経営体としての純化・強化が徹底して進められています。特に事業団は、これまで「社会福祉事業団等の設立及び運営の基準の取扱い」(いわゆる「46通知」)により社会福祉施設の委託先は社会福祉事業団を原則とするとされ、職員の賃金・労働条件・退職手当などは公務員準拠とされてきました。ところが地方自治法の「改正」議論と並行して02年8月に出された厚生労働省通知で、その原則が大幅に変更され、大問題になっています。広島県は、「施設経営の委託先は事業団が最優先ということではなくなった」「極論を言えば、今まで随意契約で事業団へ委託していたが、これが競争入札に変わるようなもの」とまで言い切っています。
 
 こうした中で、事業団に委託されていた公立社会福祉施設は、指定管理者制度の施行以来、公募による管理者指定に先行して法人(民間)譲渡が提起され、賃金は全国的に平均20%程度のカット、退職手当等の大改悪も提起されています。現在、事業団は、全国社会福祉事業団協議会の退職年金共済に加入しているか、(独)福祉医療機構の「退職共済制度」に加入しています。福祉医療機構の退職共済制度の掛け金は、事業団・社会福祉法人の社会的な役割を踏まえて、国、都道府県(以下「県」)、経営者が各1/3を負担しています。
 加えて県が独自に補助するか、県の引当金で全額みているところもあります。それにより事業団職員には、県職員並みの額が保障されていました。それが指定管理者制度の導入で、県の独自補助金などがカットされています。現在、全職員がこの時点で退職すると想定した場合の県職員並みの退職金をすべて県に担保させることや激変緩和措置などで厳しい交渉が行われています。

 神奈川県社会福祉事業団(組合は福祉保育労)では、法人譲渡に伴い今年4月から県の引当金は廃止されましたが、県との交渉で今年3月末まで勤務した年数の退職金は全額県が支給するとさせました。しかし鳥取県厚生事業団では、これまで県補助金と福祉医療機構の退職共済制度でほぼ県職員並みが保障されていましたが、今回の法人譲渡(指定管理者制度の適用施設も同様)では議会等の圧力が強く、県の補助金はカット、今年3月末退職者はこれまで通り県職員に準ずる退職金が支給されましたが、早期退職者分は事業団への貸付金(10年返済)にされました。現職員のこれまでの勤務期間に対する県の補助はありません。
 自治労連は、「これは今後全国に波及する問題であり、この間の到達点と教訓をふまえ、早急に取り組みを強めていくことが必要」ととりくみを強める方針です。
目次へ