2005年人事院勧告にあたって

第三者機関としての役割を放棄し、

構造改革に追従したダブル・マイナス勧告に強く抗議し、

地域・国民生活を守る課題と一体で、

自治体への持ち込みを許さないたたかいをすすめよう!

京都自治労連の声明

1.人事院は本日(15日)、国会と内閣にたいして一般国家公務員の給与改定に関する勧告・報告をおこないました。

 今回の勧告は、05年の官民比較による05年度に係る部分と、給与構造見直しに関する勧告・報告の二つからなっています。
 そして、この二つの中身ともマイナス勧告であり、とりわけ給与構造見直しの勧告は、現行公務員給与水準や体系を根本的に改悪する内容となっています。

2.徹頭徹尾 中央・「エリート官僚」優遇、地方切り捨ての給与構造見直し「勧告」

 この勧告の基本的な特徴は、中堅層・高齢者の大幅賃下げを行うという生計費原則を薄め、また、世界の趨勢、世界の働くルールに反して同一労働同一賃金原則を公務の分野でも破壊するものです。30歳代後半以降の級号の7%もの減額は、生計費原則を無視し、働き盛りの職員の生活を圧迫するとともに、職務への意欲も大きく損ね、職場の荒廃をももたらしかねないものです。 
 この勧告は、次の3つの格差を必然的に拡大することとなります。
 その第1は、地域間格差の拡大です。勧告は、国家公務員の給与を地域の実態に合わせるとし、ラスパイレス比較が可能なブロック単位で、最も低い北海道・東北ブロックの過去3年間の平均指数95.2に俸給水準を合わせ、平均4.8%の切り下げを行い、民間賃金の高い地域には、調整手当を廃止し地域手当を3%から18%の範囲で新設しました。
 地域手当率の指定は、国家公務員が在勤している人口5万人以上の市と、パーソントリップ(通勤者率)の一定率以上の市町(3%)としていますが、圧倒的な地域はゼロとなり、俸給の切り下げのみが強行されることとなります。今回の、俸給水準切り下げは、単に地域に勤務する公務員の賃金切り下げだけでなく、小泉「構造改悪」の進行であらゆる面での格差が拡大し、世界でも有数の格差社会になりつつある日本で、グローバル企業の活動の中心地である東京特別区のみを優遇し、以外の地域を切り捨てるものにつながります。この東京特別区優遇は、人事院の説明で、東京も民間より低く押さえたと説明していますが、千代田区が基準の人口5万人にも達しないことや、区によって較差が存在するにもかかわらず特別区はすべて18%の特例とし、特別区よりも賃金指数が高い武蔵野市や清瀬市などは15%とするなど、理屈抜きのものとなっています。また、本府省勤務者は、最低2%相当の本府省手当の新設を含めると、低く抑えたことにはなりません。
 さらに、これまで調整手当では支給の重要な要素であった物価指数を省捨するなど、生計費原則を大きく崩すものとなっています。 
 第2には、職務職責による格差の拡大です。
 給与表構造の見直しでは、新10級の新設を行いますが、この理由は、現本府省の課長級の8割が11級に在職し、この吹きだまりの解消として上位級を新設するとしています。また、特別調整額(管理職手当)の率引き上げ・定額化は、若年管理職のエリートには、大きな増額となります。こうした管理職層には改善が行われる一方、若干の号俸延長が行われましたが、枠外昇給を廃止し役職に就かない、就けない者は冷遇し、俸給表のフラット化などにより、いっそう職務職責で較差を拡大するものとなっています。

 第3には、査定昇給の導入、査定を基本とする昇格制度により、給与・一時金に格差を付け、個人による格差を拡大することとなります。この査定昇給制度などは、公務員制度「改革」で言われていた能力評価や実績評価の制度設計が頓挫し、遅々として進まないなかでの給与制度への持ち込みであり、職場に混乱以外何ものももたらさないものです。
 また、給与構造見直しによる切り下げについては、5年の経過措置をとるとしていますが、4分割後の「査定昇給」の標準を3号、2号に圧縮する方法で原資確保をおこなうとしています。これは、経過措置をとるとしてあたかも激変緩和で労働者の生活も考慮したかの様なポーズをとっていますが、その原資を独自に確保するのでなく、同じ労働者から供出させるという労働者分断の不当な措置です。
 そして、人事院勧告が総枠の官民比較であることから、総枠「均衡」のなかでの配分の性格を持っています。
 しかし、市町村では、ラスパイレスが100を割り、現行10級や11級が使用されていないことや、異動の対象がほとんど無いことも含め減額される対象はあっても、増額される対象はほとんど無く、賃下げだけが強要されることとなります。
 そして、この給与構造の見直しは、直接的には750万の労働者・国民の生活に打撃を与えるだけでなく、地方の消費水準を引き下げ地方経済にも打撃を与え、さらには、交付税や社会福祉施設補助金の削減などで地方財政にも大きな打撃を与え、均等ある発展でなく、あらゆる面での格差を拡大するこにもつながります。


3.三度不当な不利益遡及の05年勧告

 05年の官民較差は、△1,389円、△0.36%であったとし、俸給を一律0.3%切り下げ、配偶者に係る扶養手当を500円切り下げました。一時金については、最小の0.05月を改善しましたが、民間の動向がベースアップから一時金へと移行し、全体として改善が言われているなかで、最小単位の改善は納得できるものではありません。そして、「年間給与の調整」は、03年と同様に「制度調整」として遡及するとしています。給与構造の見直しの不当性とともに、05年勧告追従を許さないたたかいの強化が求められています。  

4.ILO勧告を無視し、政治的圧力に屈した05勧告

 今回の勧告は、労働基本権を否認したまま使用者が賃金とリンクする評価権を握る公務員制度改革大綱への二度にわたるILO勧告を無視し、圧倒的多数の公務員労働者に不利益をもたらす給与構造改悪を強行しようとするものです。
 二度にわたるマイナス勧告で、労働基本権制限の「代償機関」としての人事院の役割からの逸脱が、厳しく批判されましたが、7%もの賃金を切り下げ、退職金や年金にも波及し大幅に生涯賃金を切り下げる今回の勧告の強行は、国際的な働くルール、労働者・労働組合の権利の面から到底認めることが出来るものではありません。
 また、今回の給与構造見直しのルーツは、構造改革による「骨太方針」であり、経済財政諮問会議での民間議員の人件費削減攻撃、さらには、三位一体「改革」による交付税削減の主要な標的として人件費総額削減攻撃にあります。そうした点で、政治的につくられ、押しつけられた勧告と言わざるえません。


5.増税・自治体リストラなどの小泉構造改革反対のたたかいと結合し、自治体への持ち込みを阻止しよう

 郵政民営化法案が参議院で否決され衆議院が解散されました。この郵政民営化法案は、国民の財産をアメリカや日本の金融資本に売り渡し、過疎の地域も等しく保障してきた郵便や金融サービスを破壊し、格差を拡大するものです。
 給与構造の見直しのルーツも、資本がより自由に労働者を使用できるように、これまでのたたかいの歴史で確立されてきた規制を緩和・撤廃する新自由主義「構造改革」にあります。 
 今回の総選挙で、小泉「構造改革」推進勢力を過半数割れに追い込むことは、今後の自治体における確定闘争を有利にすすめる条件をつくる大きな要素とになります。そうした点で、政党支持・政治活動の自由を保障しつつ、国民に様々な格差をもたらし、安全・安心を脅かし、「競争」により多くの弱者をつくり出し、その弱者を排除する構造改革の本質曝露の運動を労働組合として大いにすすめる必要があります。
 また、所得税大増税や新地方行革指針による総人件費削減、指定管理者制度などのアウトソーシングによる公的責任放棄の自治体リストラに対し、これとの正面からの対決する運動との結合が求められています。
 公務員バッシングの意図的な攻撃があるなかで、困難があってもこれらの課題と結合した共同をすすめることを本気で追求することが求められています。
 同時に、今回の勧告の際だつ不当性に対し、権利の問題としても大きくかまえて運動をすすめることが重要です。
 全組合員が勧告の中身の不当性・問題点をつかむ学習運動をおう盛にすすめ、組合に入っていない職員にも大きく広げ、組合員を拡大し、共同を本気になって追求・実践し、この秋のからのたたかいを大いにすすめていきましょう。

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