史上最悪の人事院勧告

なんと生涯賃金で1200万円のダウン

マイナス勧告の上に、公務員の賃金制度を抜本改悪

2005年人事院勧告に対する自治労連の声明

1、不法・不当な「マイナス・遡及」勧告

 人事院は本日(8月15日)、国会と内閣に対して国家公務員の給与等の勧告を行った。
 その内容は、官民較差を△0・36%(平均△1389円)とし、基本給と扶養手当を引き下げ、本年、4月に遡って適用し、一時金をわずか0・05月引き上げるというものである。
 今回の「マイナス勧告」は、05年春闘の1・47%(3743円)賃上げという結果や地方最低賃金が2〜5円を引き上げられた事実から見ても、とうてい認められるものではない。
 しかも、4月に遡っての実施は、いわゆる「不利益不遡及」の原則を踏みにじるものであり、断じて認められない。

 
2、「能力・成果」主義と矛盾に満ちた地域手当の導入

 さらに重大なのは、「給与構造の見直し」を図るとして、@俸給表を全国一律4・8%引き下げる。A高齢層の給与抑制を図る「昇給カーブのフラット化」、B0〜18%の格差のある地域手当の創設、C「能力・成果」主義の査定賃金を導入することなど、公務員の賃金制度を50年ぶりに見直す、歴史的な抜本改悪である。
 これらの「見直し」に貫かれているのは、地域の公務員賃金の引き下げ財源で中央省庁を優遇するとともに、生計費原則を否定し、民間でも破綻しつつある「能力・成果」主義の徹底にある。
 地域手当未支給の地域に勤務する公務員にとっては、1200万円にものぼる生涯賃金の削減となるものである。「地域手当」の根拠とした「賃金構造基本統計調査」は、そもそも公務と民間賃金の比較や自治体ごとの集計を目的としたものではなく、これを適用したことにより極めて矛盾に満ちた制度となっている。
 さらに、「勤務実績に基づく処遇の推進」を口実に導入しようとする「能力・成果」主義の給与制度は、民間と同様に公務のモラルハザードを引き起こし、「全体の奉仕者」としての職務を歪める制度であり、しかも、評価制度すら確立されておらず、導入することは断じて認められない。

 
3、国民への大増税、社会保障改悪の地ならしとしての「総人件費削減」

 政府、経済財政諮問会議は、03年以降、再三に渡って人事院へ「公務員の給与制度の見直し」を「要請」してきた。そして「05年骨太方針」では、「構造改革」の当面の最大の課題に「公務員の「総人件費の削減」を掲げ「関係省庁連絡会議」まで設けて推進にあたっている。
 さらに、「05骨太方針」が、2010年代初頭にプライマリーバランスを確保するとした目標に即して、公務員の「総人件費の削減」を通じて、消費税率引き上げやサラリーマンへの大増税、社会保障の抜本改悪など国民に激痛を押し付ける“地ならし”を行おうとするものである。
 05勧告は、政府の「骨太方針」の流れに即した「総人件費の削減」のための「給与制度見直し」勧告といわざるをえない。人事院は、自らを「労働基本権の代償・公正な第三者機関」であるとしているが、労働基本権の「代償」足りえず、政府・財界の賃下げ攻撃と「構造改革」を推進する立場にたった不当な勧告である。

 
4、地方財政・地域経済をいっそう疲弊させるもの

 05年勧告の実施は750万の公務関連労働者の暮らしに直接影響し、公務、民間の賃下げの悪循環を引き起こし、地域経済の再生に努力する地域産業と地域経済に重大な打撃を与えるものである。
 同時に、財務省が「地方歳出のスリム化を通じ地方交付税総額を抑制し、地方交付税の財源保障機能の縮小」を主張した経済財政諮問会議の論議でも明らかなように、「地方公務員の給与制度の見直し」は、「三位一体改革」による地方交付税の縮小の議論に直結しており、今後確定される「地方財政計画」や「地方財政ビジョン」を通じて地方財政に深刻な影響を与えるものである。
 自治労連は、自治体・自治体関連労働者のくらしを直撃し、地域経済、地方財政の破壊につながる「05勧告」を断じて認めるわけにいかない。地域経済の活性化と地方財政の確立をめざし地域の幅広い共同をすすめ奮闘するものである。

 
5、憲法改憲・「構造改革」を阻止する絶好のチャンス、総選挙闘争と秋季年末闘争を一体に進める

 自治労連は、この間、公務労組連に結集し数次にわたる中央行動など、公務員の「給与制度の抜本改悪」阻止のたたかいと郵政民営化や指定管理者制度など公務サービスの「市場化・民営化」に反対するたたかいに住民との共同を広げて奮闘してきた。
 「構造改革」の本丸とされる郵政民営化法案が否決され、解散・総選挙となったが、これは、全国各地で取り組んできた郵政民営化反対キャラバンや議会請願、自治体要請などの運動の成果であるとともに、国民に「激痛」を押し付けてきた小泉「構造改革」への国民の批判の現れであり、国民犠牲の「構造改革」を転換させる展望を示すものである。
 自治労連は、「戦争する国づくり」としての憲法改悪、消費税・サラリーマン増税など国民への大増税と、自治体の「市場化」など「自治体構造改革」の阻止をめざし、政治の流れを変える絶好のチャンスである総選挙闘争に全力をつくすとともに、05人勧など公務員の「総人件費削減」を許さない秋季年末闘争を地域のくらしと地方自治を守る運動として大きな共同を広げて奮闘する決意である。

 
           2005年8月15日
                  日本自治体労働組合総連合 中央執行委員会

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