あまりにひどい

今年度0.3%、来年度以降さらに4.8%引き下げ

くらし破壊「二重のマイナス」勧告

   地域間格差拡大・「査定昇給」導入など

        給与制度を抜本的に改悪

   人事院は8月15日、国家公務員の給与および勤務時間等に関する報告と勧告を内閣と国会に提出した。その最大の特徴は、今年度については史上3度目となる不当な基本賃金のマイナス勧告を行うとともに、来年度からは給与制度の抜本改悪となる「給与構造の基本的見直し」を行なうという「二重の賃下げ」を勧告したことである。

  「公務員人件費削減」の背景にある小泉構造「改革」

 政府は「骨太方針2005」で「小さくて効率的な政府」にむけて「公務員の総人件費削減」や「定員削減」の方針をうちだしており、今回の人勧はこの政府による政治的なねらいと結びついたものである。この間、小泉構造「改革」の名で、年金、医療、介護保険など社会保障制度の連続的な改悪が強行され、さらに2007年には、消費税引き上げとサラリーマン増税がねらわれている。経済財政諮問会議での「公務員の総人件費削減、行政改革の成果は増税にむけての必須のプロセス」などの発言にみられるように、公務員人件費削減の行き着く先には、国民への一層の「痛み」の押しつけがあることは明らかであり、今回の勧告はそのための地ならしである。

  本俸・配偶者扶養手当を引き下げ、一時金は0.05月引き上げ

 今回の勧告の特徴は次のとおりである。
 今年の給与改定については、「官民給与の逆較差(△0・36%)を是正するとして、基本賃金を0・3%引き下げ、配偶者にかかる扶養手当を500円引き下げる。一時金の支給月数は0・05月引き上げる」という内容となっている。「マイナス勧告」は、02年・03年に続いて史上3度目であり、労働基本権制約の「代償機関」としての人事院の存在意義を自ら否定するものである。さらに「年間給与を調整」するとして4月以降の逆較差分を期末手当で減額調整することは「不利益不遡及」の原則に反する不法・不当なものであり、到底認められるものではない。なお、わずかとはいえ、一時金を引き上げたものの、勤勉手当の月数を増やすという点では問題がある。


  基本給引き下げは退職手当にも直結、地域間格差広げる地域手当

 来年度からの「給与構造の基本的見直し」には4つの特徴がある。
 第1は、基本賃金について、改定後の俸給表からさらに4・8%引き下げるとともに、民間賃金が特に高い地域に3〜18%(6段階)の地域手当を支給するとしたことである。基本賃金の大幅引き下げは退職手当など諸手当の引き下げにも直結し、公務労働者の生活破壊を一層推し進めるものである。
 また、調整手当に代わって新設される地域手当は、唯一地域における民間賃金のみを絶対的基準とすることで、これまで賃金決定に用いてきた生計費原則を投げ捨て、公務員の賃金決定基準を大きく変質させるものである。これによって生じる地域間格差は地場賃金の更なる引き下げ、地方財政と地域経済を一層疲弊させるものであり看過できない。
 京都府では、人事委員会が「地域給のあり方研究会」を設置し議論されているが、仮に国の措置がそのまま持ち込まれれば、5%を超える基本賃金の引き下げが府職員のくらしを直撃することになる。



  職務・職階給のさらなる強化で職場に差別と分断

 第2は、職務給の一層の強化で昇格しないと賃金が上がらない制度を導入して、職場における差別と分断を推し進めようとしていることである。@行政職俸給表の1・2級及び4・5級を統合し、「12級相当」級の新設による級構成の再編、A30歳代半ば以上の号俸を最大7%程度引き下げる給与カーブのフラット化、B枠外昇給制度の廃止などが打ち出されている。


  「査定昇給」の導入など「能力・成果主義賃金」の強化

 第3は、「能力・成果主義賃金」の強化を進めようとしていることである。@普通昇給と特別昇給を廃止するとともに、きめ細かい「勤務実績」の反映を行うため、現行の号俸を4分割して5段階の昇給区分を設け、査定により昇給に格差を設ける「査定昇給」の導入、A勤勉手当の「標準者」の支給月のうち0.03月分を原資として一層の実績反映の拡大がふれられている。
 国においては人事評価制度が未確立であるにもかかわらず、それは総務省の所管であるとして差別的給与制度を先行して導入する人事院の姿勢は無責任極まりないと言わざるを得ない。「モラルハザードを引き起こす」などとして民間企業でも破綻しつつある「能力・成果主義賃金」と職務給の強化は、住民のことより政府・財界の路線に忠実な「物言えぬ公務員」づくりをすすめ、結果として行政の公平性や公正性、ひいては公務労働者の「全体の奉仕者」という基本的性格を歪めるものであり、許されるものではない。



  徹底した中央省庁・キャリア優遇

 第4は、徹底した中央省庁・キャリア優遇措置をはかったことである。東京23区の地域手当を18%とすることによる現行給与水準の保障、専門スタッフ職俸給表や本府省手当の新設、特別調整額(管理職手当)の定額化など、まさに中央省庁優遇、地方切り捨ての勧告と言わざるを得ない。

  人勧のおしつけを許さず、年末確定闘争に全力

 私たちは、人事院勧告が出されたもとで、京都府人事委員会に対して政府・総務省からの露骨な介入に屈することなく、京都府の持つ経過や特殊性などをふまえた見識ある勧告を行なうよう求めるものである。また、今年度が給与カットの最終年度であることを踏まえ、カット措置の中止を勧告するよう求めるものである。
 同時に、勧告の政治的意図を打ち破るためにも、国民と公務員の分断を許さない大きな共同を広げ、憲法と地方自治が全面的に花開く「もう一つの日本」をめざして奮闘するものである。

目次へ