建築確認制度の抜本見直しを

耐震強度偽装問題について自治労連が書記長談話

自治体の体制整備、被害者救済を急げ

 民間開放」の抜本見直し、安全安心の自治体責任、被害者補償を要求する
本日、耐震強度偽装問題で、衆議院国土交通委員会による証人喚問が行われました。
事件発覚以来、日を追うごとに、建築主・施工者・設計者が居住者・住民の安全安心を省みずにコストを切り下げ、利益最優先の経営に狂奔したこと、民間開放によって建築確認の審査機関の独立性・専門性を確保できなくなったために不正を見抜けなかったことが明らかになっています。しかも建築主等が政府与党・政治家と深く癒着している構図も浮かび上がっています。一方では震度5強の地震で倒壊の恐れがあるマンションに住み続ける被害者、ローンを抱えながら生活再建を迫られる被害者の実情をふまえ、建築主等の損害賠償責任を明確にした上で、公的支援が緊急に求められています。
自治労連は、政府に対して、第1に事件の真相を徹底して明らかにし、責任を明確にすること、第2に民間開放した現行の建築確認業務を抜本的に見直し、建築物の耐震性への国民の信頼回復の対策を急ぐこと、第3に被害者に対して住宅提供や家賃補助などの応急措置だけでなく生活再建のための根本的な対策を講じることを強く要求します。また自治体に対して、住民の安全・安心を保障する自治体の責務を明確にし、公共性を後退させる国の方針に追随するのではなく、必要な専門職員を配置して安全・安心のまちづくりをすすめることを強く要求するものです。

事件の原因と背景は、関係企業の利益最優先経営と
建築確認業務の民間開放


 なぜ「姉歯建築設計事務所」の耐震設計構造計算書偽造が長年にわたって放置され、被害が拡がったのでしょうか。直接的原因は、建築物づくりに携わる企業が利益を最優先させる経営方針のもとにコスト切り下げに狂奔し、構造設計者が専門家としておこなってはならない構造計算書の偽造を行ったということです。しかし偽造が長年にわたって見抜けなかった背景に、1998年建築基準法改正による建築確認業務の民間開放があることは、多くの専門家や報道機関が指摘しているとおりです。多くの民間検査機関が建設関係企業の出資によって設立されたことをみるならば、検査機関の独立性・専門性・中立性が確保できないことは明らかで、改正当初から問題を指摘されていました。政府は現行制度(民間開放)をつくった責任を明らかにし、まず「民間開放ありき」の姿勢を改め、早急に建築確認制度の抜本的改正を行うべきです。

建築主等の被害者補償責任と、被害者救済のための公的保障を

 被害者の生活再建のための根本的な対策が急がれます。マンションの全面的な建て替え、契約解除、ローン解消等の被害者補償は「住宅の品質確保促進法」に基づき、建築主等が責任を負うことは当然です。国は建築主等の安易な計画倒産等を認めず、責任を追求するとともに、被害者救済のための公的保障についても避けがたい問題になっています。国は、阪神淡路大震災のときも、中越大震災のときにも「個人補償はしない」ことを基本に建築物の撤去費用は出しても建て直しや修繕費用を出しませんでした。しかしながら鳥取県が県西部地震で住民のくらしを守るために個人補償に踏み切ったように先進的自治体での実例もあるのですから、国民の居住権を守るために国が責任を持って制度化を検討すべきです。

自治体は、責任をもって住民の安全・安心を守るための体制整備を

 事件の全容が明らかになるにつれ、民間検査機関だけではなく特定行政庁である自治体のなかにも耐震偽装を見逃した例が少なからずあることも明白となりました。民間開放後、自治体がおこなった建築確認業務は42万件、民間検査機関は33万件(2004年度)へと民間化がすすみました。多くの自治体では効率化を理由に建築行政に携わる人員削減がすすめられています。しかも自治体職員が検査等の現場から切り離されることによって専門性(スキル)の低下が懸念されています。他方では、耐震診断・改修、欠陥住宅や悪質リフォームに関わる相談などの課題も増えています。そのためにも自治体は、民間に丸投げするのではなく、住民の安全安心のまちづくりを担う職員と体制を拡充すべきです。
 自治労連は、自治体当局に対して、@「自分のマンションは大丈夫か」という不安を解消するために法施行後に建築されたすべての建築物に対する全件調査、少なくとも抜き取り調査を実施すること、A特定行政庁およびすべての自治体はただちに建築行政にかかわる専門職員を増員し、住民の安全安心を守る体制を整備すること、B建築確認制度について国に対し「民間開放」を改め公的責任拡充の抜本的見直しを求めることを要求します。
2005年12月14日
日本自治体労働組合総連合
書記長 大黒作治(談話)
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