年間3万人を超す自殺者、中小企業の倒産、若者の就職難と低賃金・無権利、生活保護世帯の増。その一方で大企業は空前の儲けで貯めこんだお金は83兆円(金融業除く)。小泉「構造改革」で府民のくらしと営業は?実態を取材しました。

 

コメだけでは食えない
 
 福知山市下豊富地区は、昔から「おいしい米どころ」として知られています。海抜80メートル、粘土質の土地で稲作のシーズンになると気温の高低差があり米づくりに適した風土です。Sさんが住む大門地区は、戸数37戸、農家が34戸。農業に専念している「担い手」は2人。Sさんは、4町3反の農地を所有し2町4反が米、あとは転作で野菜を栽培しています。ビニールハウスが4棟あります。(写真は春をまつ、下豊富地区)
 収穫した米は、産地直産として福知山市内を中心に販売。30キロ1万円で360袋はすべてなくなります。販売ルートがしっかりしているためです。
 「それでも、収支はトントン」「精米機やコンバインなど機械代に消えてしまう」「肥料代もバカにならない」「米づくりは経費がかかりすぎる、経営は成り立たない」と経営状態を語るSさん。
 もっと高く売れる品質のいい米づくりにも挑戦しています。そのためには土づくりが大切だとか。酵素や米ぬかなどを分解してつくる土づくりの勉強会や試作米づくり、消費者による試食などまだ道のりは遠い。
 Sさんは、大門の集落の発展のためにも力を注いでいます。他の農家の苗づくり、秋祭りでの住民の交流、休耕田をなくすための工夫など「村づくり」も大切。
 大門の秋祭りは、集落総出で屋台を出したり、もちをついたり、ゲームをしたり、藁のあみ方や、野菜の即売など大賑わい。近所の人たちも参加し、農家と消費者とのふれあいの場にもなります。これが活気ある集落をつくっていく力になります。
 転作がつづく中、野菜づくりにもがんばっています。秋に収穫するきゅうり、万願寺とうがらし、ハウスでの水菜、手間隙かけての野菜づくりですが、収入はなかなか。「粘土質なんで、野菜には適してないかもしれん。土づくりが大変」といいます。
 Sさんの耕作面積は福知山市内では上位のほう。全国的には中の上ぐらいの位置だとか。それでも、農家経営では食っていけない。米づくりは国に価格保障もなく、営農援助もほとんどありません。高い農機具が収入を吸い上げ、家計は安定しません。最近は、鹿やいのしし、サルが農作物を荒らし、電気柵を張ったり余分な支出も増えています。
 Sさん宅の家計を支えているのは、おばあちゃんと奥さんと貢さんの年金です。安定した収入があってこそ、後継者も育っていきます。

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