地方自治・地方分権に逆行する「新行革指針」

自治労連が書記長代行談話

 総務省は3月29日、地方自治体に「新たな行革」の推進を押し付ける「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針(新行革指針)」を通知しました。自治労連は3月30日、松本書記長代行談話を発表しました。

 自治体を変質させいっそうの住民犠牲を強いる「新行革指針」

 総務省は3月29日、地方自治体に「新たな行革」の推進を押し付ける「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針(新行革指針)」を通知した。  これは「三位一体改革」と「中期地方財政ビジョン」による地方財政の削減、自治体業務のアウトソーシングを地方に迫り、地方自治・住民自治を形骸化し解体する内容を含むもので許されるものではない。 
 「新行革指針」は、その目的を「住民の負担と選択に基づき各々の地域にふさわしい公共サービスを提供する分権型社会システムに転換していく必要がある」とうたい、住民に新たな大きな負担を押し付けるとともに、地方自治体業務を「市場原理」に基づく儲けの対象として市場に投げ込み自治体を変質させ地方・地域を切り捨てようとするものである。
 「三位一体改革」に苦しみ、さまざまな努力をしている地方自治体に対して、負担と犠牲を押し付けるだけで、なんら未来に対する展望を与えるものではなく、経済財政諮問会議など、さまざまな機会に財界が主張している「地方のあり方」を根本的に転換しようとする一連の流れに即して打ち出されたものである。
私たちは、「住民福祉の増進」という自治体の原点に立ち返り、住民のくらしと地方自治を守り、拡充する改革を求めるものである。 

 定員削減や民間委託など数値目標を設定

 総務省は「地方分権」を原則としているがゆえに今回の指針も、地方自治法252条17−5に基づく技術的「助言」としているが、政府自らがつくり出している地方財政危機の責任を曖昧にして、全国画一的に期限や数値目標まで強要して、この実施を地方に迫る手法は、「地方分権」とは相容れない時代錯誤のものであり、地方はこの指針に従う義務は毛頭ない。地方自治を所管する総務省の「言行不一致」という言うべきものである。
 地方自治体へ出された「新行革指針」の新たな特徴は、第1に、2005年度から2010年度までの「集中改革」プランを2005年度中に策定し住民に公表することを求めている。   
 その内容は、@事務・事業の再編・整理、廃止・統合、A指定管理者制度の活用を含む民間委託の推進、B手当の総点検をはじめとする給与の適正化、C定員管理の適正化など、具体的な項目をあげ「改革」を迫っているが地方自治体のさまざまな独自性を否定する不当なものである。
 第2に、「定員管理の適正化」についても、これまでの行革指針と大きく異なり、全国一律に期限を定め、数値目標を提出させ、2011年4月1日における数値目標、この5年間の定員削減数を20万人(4.6%)を上回るものを示すように指示している。
 しかし、2月の経済財政諮問会議で麻生総務大臣が「日本の公務員数と言うのは人口1000人当たり35人、フランスの96人、アメリカの80人、イギリス73人に比べ…日本はかなり少ない」と発言しており、公務員数は先進国の中でも極めて少ない中で、更なる一律削減は公務・公共業務の空洞化に直結する。
 
 賃金の引き下げ、地方交付税の大幅削減・廃止への道開く
 
 「給与の適正化」について、政府・総務省は、これまで「労働基本権の代償」としての人勧制度の尊重を繰り返してきたが、今回の「指針」による「適正化」の名による引き下げを求める「助言」は、こうした基本的立場からも許されるものではない。
 また、ムダと浪費の「都市再生」などや、個人情報の漏洩などの危険がある住基ネットの推進など住民不在の「行革」を押し付けるものとなっている。
 第3に、「新行革指針」は、2007年度から「中期地方財政ビジョン」により地方交付税を大幅に切り下げることに対応する自治体づくりをめざすものである。地方交付税の更なる削減を前提に、各地方自治体に歳出構造の大転換を迫るという「指針」の押し付けを通じて、地方交付税の大幅削減・廃止へ道をひらこうとする攻撃とは断じて闘う決意である。
 
 自治体業務の営利化、市場化推進
 
 第4に、指定管理者制度や地方独立行政法人など、アウトソーシングのツールの活用を自治体に迫り、自治体業務の「営利化・市場化」を推進しようとしている。
 自治体業務について「企業等の多様な主体が提供する多元的な仕組みを整えていく」としているが、こうした流れは住民参加の拡大と言えるものではない。50兆円市場」のパブリックビジネスとして民間企業が参入を狙い、自治体業務が「住民サービスも金次第」という内容に変質させかねない内容である。
 
 自治体業務を企画部門だけにし、他はアウトソーシングに

 第5に、地方自治体を「『新しい公共空間』を形成するための戦略本部」へと、その役割を重点化させていくことを新たに打ち出しているが、これは自治体業務を企画部門に特化し、実施部門は、全て民間に「アウトソーシング」することをめざすものである。 住民から切り離された企画部門としての「戦略本部」は、住民の声や要求を反映しないものとなるなど、住民自治を益々形骸化させ「住民の権利」を破壊するものである。
 また「第三セクターの抜本的見直し」や「地方公社の経営健全化」を打ち出しているが、政府自らが推進したバブル期のリゾート開発や公共事業推進の政策の誤りを反省することなく、財政赤字だけを一方的に自治体の責とする国のあり方に自治体は納得できるものでない。
 
 住民とともに地方自治を守り民主的な行政の効率化へ
 
 こうした点で「新行革指針」は、地方自治を解体し、住民と職員にしわよせを押し付けるものであり、到底認められない。もしこの内容が地方で実施されるならば、住民の権利は侵害され、自治体の自由度の拡大どころか、住民自治そのものが形骸化するものである。
 自治労連は、こうした地方自治そのものを破壊する攻撃に対して、住民とともにはね返していく。事務事業を縮小・廃止して地域の住民生活を守ることができるのか、「市場化」を許して住民の権利が守れるのかなど、地域の中でさまざまな問題提起を行い、共同を広げていく。それと同時に人件費を切り下げて地域経済が成り立っていくのか、いっそう地方を疲弊させることとなるのではないか、などの点を明らかにしながら、都市再生やIT自治体などのムダを正して自らの賃金労働条件の点検を含む、自治体の民主的効率化をめざす民主的行政改革を推進して住民の理解を得ることは重要である。そしてこの「新行革指針」をはね返す運動と、「こんな地域と日本をつくりたい」という具体的な提案を行うことでより大きな共同をつくるために奮闘する決意である。
     (PDF) 新地方行革指針(本体)

            
2005年3月30日
                        日本自治体労働組合総連合
                         書記長代行 松本利寛(談話 )
目次へ