公務・公共サービスの切り捨て

「総人件費改革基本指針」の決定に抗議する

自治労連・書記長談話

 経済財政諮問会議は14日、公務員の「総人件費改革基本指針」(以下、基本指針)を決定した。「基本指針」では、国家公務員及び地方公務員の定員削減と給与制度改革の両面から総人件費削減を打ち出している。

 小泉自公政権は、さきの総選挙を通じて郵政民営化を強行し、憲法改悪を企図しながら次の「構造改革」の標的を「小さな政府」に移しているが、まさに基本指針は財界主導でまとめた「小さな政府」への指令書である。マスメディアも「『まず数字ありき』で打ち出された色合いが濃く」(「東京」15日付)と指摘するように、国民の権利とくらしを守る公共サービスと公務員の役割、欧米諸国と比べても今でも少ない日本の公務員数、膨大な財政赤字を生み出した原因と政府の責任をまともに受け止めたものとは到底言えない。

 公務サービスの切り捨て、公務員の大幅削減をねらう基本指針の決定に対して断固抗議するものである。そして政府に対し、基本指針の撤回、実施計画のとりまとめ作業の中止を要求する。
 基本指針では、今後5年間で国家公務員を5%以上純減させる数値目標を掲げるとともに、地方公務員については「新地方行革指針」で示した4.6%以上の純減目標を「上積み」することを求めている。さらに地方公務員のうち、国が定数の基準を定める教育、警察、消防、福祉関係208万人については、国基準の見直しで4.2%以上純減させ、それ以外の自治体が主体的に定数を決めている107.5万人については、新たな施策を原則として行わず、公立学校の大学法人化、公営企業等の地方独立行政法人化(非公務員型)、民営化等によって5.4%以上純減させることを求めている。
 いまでも基準に対して消防士が5万人不足している消防、「子どもたちに行き届いた保育を」と職員配置基準の改善を求めている保育所、「30人学級の実現を」という保護者・教職員の切実な願いに対して、国は逆に現行基準を引き下げ、無理やり住民サービスの第一線から地方公務員を剥ぎ取る暴挙をおこなおうとしている。
 指定管理者制度等による民営化に対して「住民の財産を民間企業の金儲けの場にさせるな」「住民サービスに対する国や自治体の責任を後退させるな」という住民の怒りと運動が全国各地に広がっているが、国は地方自治の原則を蹂躙して国の方針をそのまま自治体に押し付けるとともに、「住民福祉の増進」という自治体の基本的役割を変質させようとしている。

 さらに基本指針では、給与制度改革において「職階差の大幅な拡大」「能力主義や実績評価に基づく処遇を含めた公務員制度」を掲げるとともに、地方公務員については「地域の民間給与の水準を的確に反映」することを求めている。これは地方公務員に対し「政府に忠実な公務員づくり」と賃金の引き下げという二重の苦しみを強要するだけでなく、地域住民にとっても「地域経済のますますの停滞と地域間格差の拡大につながることが懸念」(札幌市議会・意見書)されるものである。

 このような基本指針が、国民や労働組合の意見を反映させる機会を保障せず、自治体関係者との協議もおこなわず、ひたすら財界の要望に全面的に応えて、財界の利益を代表する民間4議員の主導で政策決定されたことも重大な問題である。

 自治労連は、地方自治を蹂躙し、かつ住民のくらしと権利を守る行政水準を後退させ、弱肉競争の格差社会をより拡大させ、地域経済を停滞・衰退させる基本指針を絶対に容認することはできない。「基本指針」にもとづく公務員総人件費削減、公務・公共サービスの営利企業化・商品化を許さず、国民との共同をひろげてたたかう決意である。

目次へ