労災被災者が25年ぶりに増加

JR西日本の列車事故の教訓を生かせ

7月1日〜7日は全国安全週間

 労働災害の防止を目的とする全国安全週間。78回目となる今年のスローガンは,「トップの決意とみんなの創意 リスクを減らして進める安全」。6月はその準備月間です。JR西日本の列車脱線事故は、企業の安全対策の責任が改めて問われています。

●年間被災者1万3千人増/重大災害3年連続増加
 厚生労働省によると労働災害の被災者数は「長期的には減少」しています。ところが、03年は前年より一気に1万3000人も増加し、被災者は54万2606人に。前年よりも、被災者数が増えたのは実に78年以来25年ぶりのことです。
 もう一つの特徴は、重大事故の増加です。死亡者数だけでみると、04年は1620人で前年よりも8人減少し、過去最小です。その一方で、一度に3人以上の労働者が死傷する重大災害の件数は、02年から上昇していて、昨年は76年以来28年ぶりに270件を超えました。

●事故の背後にリストラ
 重大事故と被災者増加は何が原因でしょうか。
 昨年9月、厚生労働省が発表した「今後の労働安全衛生対策の在り方に係る検討会報告書」は、事故の背景として次の点を指摘しています。
 @設備の高度化・自動化が進む一方で、安全対策の見直しが不十分
 A合理化でベテラン労働者が減り、安全確保の知識や技術が次世代に伝承されにくくなっている
 B請負などアウトソーシングの増大、雇用流動化で、所属や就業形態の異なる労働者が混在している つまり、儲からない「安全」には金をかけず、その人員も減らしてきたツケが回ってきたということ。
 JR西日本の脱線事故の背景とされるさまざまな問題にも重なるものです。

●企業まかせに出来ない安全
 厚労省の報告書は、企業に対し「リスク・アセスメント」として、危険・有害要因を特定してリスクを評価し、それを低減させる措置を求めています。労災の芽を事前に摘もうという提起です。
 しかし、企業側がこれを真摯に受け止めるかは疑問。03年「労災隠し」で送検された件数は132件、前年より35件も増えているのが一例です。これでは事故を教訓に職場の危険を減らすことは望めません。
 また、財界は、派遣や有期雇用などいっそうの雇用規制緩和を政府に迫っていますが、そこには職場の安全度をキープするという発想はありません。例えば、今国会に提出されている労働安全衛生法の改正案です。建議段階では、製造現場の派遣・請負労働者の増加に対応するため、親会社の安全・衛生管理者が子会社などの安全・衛生に責任を
持つべきだとの提起がありました。ところが経済界の反発で、法案からはこの部分が抜け落ちました。
 働く労働者の安全を守るのは、企業が最低限守るべき社会的責任(CSR)です。その自覚を迫る取り組みが組合にも求められます。
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