カローシも“自己責任”!?

長時間残業を容認の労働安全衛生法改悪案

 通常国会で廃案となった労働安全衛生法等の一部改正案が、臨時国会に再提出されています。長時間労働への対策を後退させ、健康破壊を助長する危険な内容です。

残業100時間以下を放置・過労死水準超えてから「対策」 

 労働安全衛生法改正案は、過労死予防として「医師による面接指導」を企業に義務付けています。しかし、問題はその要件。法案には「省令で定める要件」としか書かれていませんが、労働政策審議会の建議(04年12月)に基づき「時間外労働が月100時間を超えた場合」がその中身として想定されています。
 2002年の厚労省通達は、月45時間以上の残業をさせた企業に対し、産業医の「助言指導」や「面接指導」を求めています。これは、月45時間以上の残業で過労死や精神障害のリスクが高くなるからです。
 月100時超の残業は、過労死の労災認定基準を満たす水準。いつ死んでも不思議ではない状態です。労働者がここまで追い込まれてはじめて、産業医の面談を受けさせる義務が企業に生じるというのでは、過労死や過労自殺の予防にまったく役立ちません。

企業責任を棚上げ・「医師面接」は労働者申し出が要件

 過労死に対する企業責任が棚上げされる心配も出されています。
 現在の通達では、月45時間・80時間超の残業をさせた場合に、産業医の助言指導を受けたり、労働者に面接指導を受けさせることは企業責任です。
 ところが法「改正」に基づく省令では、月残業時間が100時間を超えた場合も、労働者「本人の申し出」がない限り、企業には産業医の面接指導を受けさせる義務を課さないことが予定されています。
 しかし、成果主義の人事管理が行われている職場で、マイナス評価につながる「申し出」を労働者が行うのは困難。また、「申し出」を要件とすることは「安衛法に事業者の免責事項を定めることにほかならない」の指摘もあります。 過労死の企業責任が問われた時、「医師の面接を申し出なかった労働者の責任」という免罪符を企業に与えることになりかねないのです。

不明確な親会社責任

 一般の労働災害対策については、単身赴任中の労働者が帰省する際の交通事故を通勤災害保護制度の対象とするなど、制度の改善面も含まれています。
 しかし、派遣や請負など雇用関係が重層化・複雑化する職場での労災防止に求められていた親会社(元請)責任の明確化は盛り込まれていません。
(連合通信)
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