2017年まで毎年保険料引き上げ
給付は6割を5割以下に引き下げ
これが小泉内閣がねらう年金改悪
 
 政府が今国会で成立をねらう年金制度 「改革」。その中身を見ると改革とは名ばかり。その実態は?
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年収500万円で毎年約9000円ずつアップー保険料

 政府・与党は厚生年金の保険料を現行の13.58% (労使折半) から18.30%へと引き上げる考えです。年収5百万円の労働者の場合、現行より10万円余り多い年間約46万円の負担を強いられるなど、私たちの生活を直撃する大改悪です。
 政府は保険料を今年10月から毎年0・354%ずつ引き上げ、2017年度に18・30%にする考え。 年収5百万円(月収30万円、ボーナス年140万円)のケースを試算してみましょう。現行の保険料は年間67万9千円で、その半分の33万九1500円を労働者が負担しています。毎年引き上げられる0・354%は年間1万7700円にあたり、労働者負担は8850円。この結果、保険料は2017年には年間91万5千円に達し、労働者負担は45万7500円となります。労働者の負担は今より年約12万円も増えるわけです。
 民間労働者の平均給与が五年連続で下がり、貯蓄のない世帯が2割を超えるなど、生活は年ごとに厳しくなっています。保険料の大幅引き上げは大きな打撃です。

退職後は、年金が命綱 給付を削減されたらお先真っ暗

 政府の年金「改革」案は給付額の大幅引き下げがもうひとつの柱。現行の給付額は現役世代の所得約6割ですが、これを将来は約50%に引き下げるとしています。高齢者の生活のよりどころを大幅に削減しようという改悪です。
 厚生労働省によるモデル世帯(勤続四十年の夫と専業主婦)の場合、現行は現役世代の所得の59・4%。政府はこれを段階的に引き下げ、最終的には50・1%にする考えです。「50%以上を確保する」といいますが、40年間共働きの世帯の場合、現行の46・7%が2025年には39・4%に、男子単身者は42・7%が36%に、女子単身者は53・3%が45%に低下。やっと50%に届くのはモデル世帯のみというひどさです。
 「国民生活基礎調査」(厚生労働省)によると、公的年金や恩給を受けている高齢者世帯のうち、59・5%は 「収入の100%が公的年金・恩給」というのが実情。「8〇〜100%未満」も11・4%など、高齢者の生活にとって年金はまさに命綱。給付引き下げは高齢者に生活苦を強いるものです。 

リストラ加速の恐れも 企業が対抗手段に
雇用・労働条件の改悪検討



 「年金制度改悪なんて私たちには関係ない」と思っていませんか。改悪は現役世代の雇用や労働条件にも大きな影響を及ぼす恐れがあります。日本経団連や日本商工会議所の調査がそれを示しています。
 日本経団連は昨年10月、大手企業を対象に厚生年金保険料が引き上げられた場合への対応を調査しました。それによると、企業は@労働形態の転換78%A人件費調整67・8%B従業員数の調整5〇・8%などを検討(複数回答)しています。コスト削減のためにリストラが行われかねません。
 「労働形態の転換」は、派遣の導入がトップで、次いで業務委託、請負。人件費調整では多い方から法定外福利費、賞与、月給、企業年金、退職一時金でした。日商の調査は昨年9〜10月に実施され、212の企業と162の個人事業者が回答しました。年金保険料が引き上げられた場合の対応(複数回答)として、企業では@賃金調整53%A厚生年金適用を受けない形態への転換52%B従業員数の検討43%−が多い。個人事業者では賃金調整45%がトップを占めました。
 現役労働者と高齢者が手をとりあって、年金改悪反対のたたかいに立ち上がる時です。