「学生無年金」障害者の訴え棄却

各地の判決に逆行する不当判決

 学生の国民年金が任意加入だった時期に、未加入のまま重度の障害を負い、障害基礎年金の支給を国に拒否された男性と女性2人が、不支給決定の取り消しと損害賠償を求めていた訴訟の判決が18日、京都地裁(水上敏裁判長)であり、原告の訴えをすべて退ける不当な判決を下しました

 東京、新潟、広島とつづいた地裁判決は、成人学生を国民年金の任意加入としつづけたことが誤りであったこと、障害基礎年金を支給しなかったことは行政の間違った判断であったことを示してきましたが、京都地裁は、こうした各地の地方裁判所の流れとはまったく違う判断を示しました。 判決は、学生無年金障害者が障害基礎年金を受け取れない結果「経済的に困難な者が生じたとしても」「障害者に対するその他の社会保障制度の存在を考慮すると」学生無年金障害者の「生存権を侵害するともいえない」と言って、障害基礎年金が、重度障害者の生活保障に果たしている役割を頭から否定しています。

 また、学生時代に統合失調症と診断された女性原告が、それでも頑張って大学を卒業し、企業に就職し、縁があって結婚して、社会的治癒を果たしたことを、「薬物治療等によってようやく症状を抑えていたにすぎなかった」と切って捨てるなど、精神障害者医療・福祉の現在の水準を理解しない判断を示しています。 現在国会では「障害者自立支援法案」が審議されています。この法案は、例えば、肢体障害者が、衣服の着脱の介助をして貰うためにヘルパーさんの助けを借りたら、その料金の1割を負担しろというもので、障害者の「自立」を妨げる仕組みを導入するものです。

 京都地裁の、年間にすれば百万円にも届かない障害基礎年金さえ、あたかも贅沢であるかのように描く判決は、「障害者自立支援法案」に典型的な、社会的弱者切り捨て路線に繋がる態度といわざるを得ません。 原告は直ちに大阪高裁に提訴しました。(ヒューマン京都号外より) 
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