急ピッチですすむ

「給与構造の基本的見直し」

5%ダウン・評価制度・地域給の導入へ

   キャリアを超優遇ターゲットは地方公務員の賃下げ

 人事院は昨年の人事院勧告をふまえ、昨年11月に「給与構造の基本的見直し」(素案)を示し、今年に入ってからは「(素案)の説明」を労働組合や各省庁に行なうなど今年8月の人事院勧告にむけて6月中にも方針を固めるとして、急ピッチで作業を進めています。

 地域経済への深刻な影響賃金決定原則の変質

 今回示されている「素案」では、「民間準拠」を口実に、全国共通の現行給料表を一律5%程度引き下げ、東京など民間賃金水準の高い都市部に勤務する職員に対しては、現行の調整手当に変えて0〜18%の「地域手当」を上乗せ支給するとしています。
 全国共通の給与表水準の一律引き下げは、多くの民間労働者の賃金に影響を与え、「賃下げの悪循環」により地域経済に深刻な影響をもたらします。また、賃金決定の原則である「同一賃金同一労働」や「生計費原則」を否定し、事実上、地域の民間賃金への準拠を「絶対的な基準」とすることにつながることになります。

 差別をいっそう拡大する給料表づくり

 また、「素案」では、給料表の構造を大きく見直すとして、@行政職給料表の1級と2級、4級と5級を統合するとともに、本省重要課長を対象として12級を新設し、級構成を再編、A給与水準の引き下げ分(5%)とあわせ、公務の中高年層の水準が2%程度高いとして、4級以上の高位号給の水準を最大7%程度引き下げる一方で、3級以下の号給は一律5%を下回らせることで昇給カーブのフラット化をはかる、としています。また、枠外昇給は廃止するとしています。
 これは、「昇格しないと給料が上がらない」仕組みをいっそう強化するとともに、4級以上の号給の初号から最大7号給カットすることとあわせて、いっそうエリートを優遇しようとするものです。

 評価による賃金の「査定」制度へ

 さらに、「素案」では、これまでの普通(定期)昇給と特別昇給をやめ、その代わりに昇給幅を細分化して勤務実績を給料に反映させるための「査定昇給」制度が提案されています。昇給幅は現行号給を4分割し職員層毎に昇給幅の分布割合が定められ、「評価」が「極めて良好」な人は8号給、「要努力」者は2号給などと「査定」結果によって昇給幅が左右されます。また、勤勉手当においては0・05ヶ月分程度を拠出し、上位評価者に再配分することを検討しており、給料への実績反映の仕組みを一層拡大しようとしています。
 恣意性が大きいとして民間でも問題とされている「評価」結果により、昇給や一時金を決められるようにすることは、職員を差別・分断し、職場のチームワークと組織的業務遂行を崩すものであり、公務職場になじむものではありません。

 地方公務員の給与水準引き下げがターゲット

 「給与構造の基本的見直し」を国家公務員の問題として看過することはできません。なぜなら総務省は、人事院のこうした動きと連動し地方公務員にどう適用するかを目的に財界の代表も入れた「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」を昨年10月に立ち上げ、今年3月までに中間報告、来年3月までに最終報告を行なうとしています。「地方自治体が国家公務員に準ずる形で決めている地方公務員の給与引き下げにつながることを期待している」(朝日新聞)とあるように、人事院の「給与構造の基本的見直し」が地方公務員の賃金引き下げをターゲットとしていることは明らかです。
 さらに、これらの「見直し」の方向はいずれも私たちが職場で団結して府民のための仕事をするために築き上げてきた「生計費を重視し、差別と分断を許さず平等に」という賃金闘争路線と真っ向から対立する内容です。職場から学習を強め、地域での共同を広げながら署名など総務省や人事院への行動を成功させ、「見直し」を許さないとりくみに全力をあげようではありませんか。
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