市民運動や労働運動の弾圧自由

現代の治安維持法=共謀罪が審議入り

 共謀罪」新設を盛り込んだ刑法改正案が審議入りしました。
 現在の刑法は、実際に犯罪行為が行われた場合にのみ、処罰することを原則としています。共謀罪は、傷害や組織的強要などを2人以上で団体として計画した場合に、実行も準備もしなくても処罰できるとするものです。具体的な事例としては、現行刑法の懲役・禁固四年以上に相当する罪を対象とし、550を超える罪を対象とします。
 「共謀」は、協議の場で発言しなくても、その場に居合わせるだけで有罪とされます。いわば、心の中まで犯罪の対象とされる異常さです。例えば、「マンション建設に反対して、強行着工に抗議し、座り込みを計画」した場合、「組織的威力業務妨害」(懲役五年以下)の共謀罪とされる危険性もあります。(7/7朝日)
 リストラに反対し、社長交渉で、社長の退席を認めない行動の役員配置などを討議した場合、「監禁」の罪で共謀罪を適用される危険性もあります。実行しなくても、内心の自由までもが犯罪の対象とされる危険なものです。
 2000年11月に「国際的な犯罪の防止」と国内法の整備を名目に提案されたのが「共謀罪」です。これまで継続審議のまま実質審議入りはくい止めてきました。それが六月二四日から審議入りという危険な動きになっています。
 「戦争する普通の国」にするための憲法九条改悪と連動した、戦前の治安維持法ともいうべき危険な法案です。労働組合、民主団体だけにとどまらず、すべての市民が犯罪者の対象とされるでしょう。

「治安維持法の再来」識者が危険性訴え
 刑期4年以上の犯罪について複数の人が合意しただけで罪に問われる共謀罪を新設する法案が六月末、衆院法務委員会で審議入りしました。市民団体がこのほど都内で開いた法案反対集会では、「治安維持法の再来」などと危ぐする意見が識者らから出されました。 足立昌勝関東学院大学教授(刑法)は「戦前日本では『主義者』(かつて俗に社会主義者や共産主義者を指した言葉)を取り締まるため、刑法を補うかたちで治安維持法がつくられました。共謀罪はその現代版だ」と警鐘を鳴らします。話し合いが処罰の対象となるのであれば、思想を弾圧したかつての治安維持法と同じだからです。市民運動や労働運動へのスパイ潜入、電話傍受などがひんぱんに行われるようになることも心配しています。
 法案が出された背景について、渡辺治一橋大学教授は、軍事大国化や社会保障の切り捨てなど米国型階層社会のような国づくりをめざす政財界にとって、市民の自覚的な反抗運動を規制することは重要な課題になっていると指摘。「共謀罪を導入しようとする動きは警察や捜査当局の思いつきではない。憲法・教育基本法改悪の流れと一体。私たちは支配層の構想を認めるかどうかの分岐点に立っている」と強調しました。 ネットワーク反監視プロジェクトのメンバーである小倉利丸さん(富山大学教員)は、「社会的に排除された人たちや市民運動、労働運動の担い手がターゲットになるだろう」と述べ、捜査当局による電話盗聴など市民への監視が一層強化されると指摘しました。
 日本弁護士連合会でこの問題を担当する海渡雄一弁護士は、「自民党はほぼ原案のまま突っ走ろうとしている」と述べ、会期末(8月13日)に向けて盗聴法反対運動以来の取り組みをと、呼びかけています。                                           (連合通信)

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