寒冷地手当削減の背景データの

早期提示を


「生活給的手当は見直しの傾向」と強弁

国公労連が寒冷地手当で人事院交渉


人事院、「生活給的手当は見直しの傾向」と強弁

 国公労連は31日午後、寒冷地手当見直し問題に関して各単組書記長レベルによる人事院交渉(要求提出後4回目)を実施。人事院側は職員団体審議官が対応しました。
 冒頭、国公労連側は、これまでの交渉経過を踏まえて要旨以下の点を主張し、今回の見直しの撤回と人事院側の説明を求めました。
 ○全国異動前提の公務の場合寒冷地への赴任による出費などの考慮が不可欠。民間支給状況調査は地場企業を含めた同種手当の有無や平均的水準だけでなく、全国展開の大企業の支給状況の把握やデータの公表も必要だ。
 ○金沢の職場アンケートでは、6割近くが今の手当でも足りず、暖房・除雪費の平均は8.5万円。燃料費が年間15万円を超える職員もいる。家計調査では5級地で20万円、3級地で6〜7万の不足が現に生じている。増嵩費の補填という性格が変わらないなら、こうした実態を踏まえた検討が必要だ。
 ○手当の性格からすると、民間がどうあれ、寒冷生計増の補填は必要。不景気で民間が手当を削る中で、民間準拠を強調した手当改悪はいくらなんでも行き過ぎだ。大阪・東京と比べた寒冷積雪地の困難度は明らかに異なり、そこに少し多めに配分しても不満もでないし、国民に対する説明もできないとは思えない。
 ○職員への影響にとどまらず、生活扶助受給者など間接的影響も視野にいれた検討が必要だ。

 これに対し人事院は、要旨以下のように回答しました。
 ● 寒冷積雪地では多かれ少なかれ余分に費用がかかるという点は指摘のとおり。ただ、民間など一般の人も同じ条件にあるが、終戦直後と違い、月給の中でやりくりするのが原則になっていくだろう。その傾向の中で、民間の生活給的な手当はだんだん見直しの傾向にある。ただし、すべて一度に無くなるわけでもなく、扶養手当などはまだ多くの企業が支給しているが、個別に生計費がかかることと、それを即雇い主が手当として補填するかどうかは別問題だ。
 寒冷地手当は、もともと生活水準が低く、エンゲル係数も60を超える状況の中でやりくりで冬の燃料費を確保することが難しかった時期には具体的な納得性があったが、今は全く事情が違う。この大きな変化を踏まえて費用をどこまで手当で見るのがよいかは、やはり民間の普及水準が一番重要な判断材料とならざるをえない。寒冷地手当が残るとすれば、寒冷生計増嵩費補填というその趣旨は変わらない。
 ●全国企業の支給状況については、民間支給状況調査の分析が進めば示せるかもしれない。しかし、公務と似た全国展開の企業についてみても、必ずしも同じような措置をとっているわけではなく、個別生計費をどこまで手当でみるかという点では、だんだん見直しが進んでいるのではないか。
 ●見直しの社会的影響にはいろんなレベルの影響があるし、影響がありうることは視野に入れるが、逆に影響があるから、公務の手当のありかたをどうこうするのは本来の趣旨とは違う。
 ●部内配分であり内部の納得があればという意見だが、従来そういう面もあった。しかし、昨今の状況は、配分傾向についても、民間の配分傾向と大きく異なる点については、大きな批判を受ける傾向がある。民間と大きく異なる配分傾向をするには、まったく違う事情があり、だれからも納得される特殊性や具体的理由が必要で、それがないと、公務だけが有利ではないかと言われかねない。
 ●寒冷地手当の額は今でも足りないと言うが、これも個別の生計費をどこまで個別手当でカバーするかに関わり、その点は、全体として薄れていると申し上げた。給与の中で、各自のライフスタイルや嗜好等に応じて個別費用をやりくりしていくのが、ここまできた給与水準ではだんだん原則になるのではないか。

 この回答に対し、国公労連は「民間の平均像(平均値)への準拠では、企業の賃金政策の特殊性、企業による手当の必要性や人材確保の切実性が無視され、不適切なやり方だ」「生計費の考慮は国公法64条の要請でもある。個々の生計費の補填の必要性が薄れたという見解との関連はどう説明するのか」「今後の議論を深めるためにも人事院のデータ(全国展開企業を含めた民間支給状況、寒冷生計増嵩費の試算、地域区分の根拠となる気象データ)を早急に示すこと」と主張しました。
 これに対し、人事院側は「国公法64条は俸給表をつくるに当たって生計費、民間賃金などを勘案することを求めているが、最終的に生計費も取り込まれる民間賃金に準拠することが一番手堅い方法といえる」「民間の平均にピッタリ準拠するのがベストかということはあり、組織体としての公務内の均衡も一定配慮するのは当然。しかし、寒冷地手当についていえば、民間で増嵩費をまかなうという同じ趣旨の手当を持っているかどうかを調べ、普及率が低ければ増嵩費をまかなう措置をする必要性は一般的には薄いといわざるをえない。民間の地場企業や大企業とも違う公務の特殊性があるなら言ってほしいが、だれからも納得してもらえる議論ができるかどうかだ」などと回答しました。