2005年骨太方針、政府税調報告に抗議

自治労連・書記長代行談話

 6月21日、小泉内閣は「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」(骨太方針2005)を閣議決定し、政府税制調査会はサラリーマン増税を柱とする「個人所得課税に関する論点整理」という報告を公表した。
 「骨太方針」は、財界やアメリカの利益を優先し、重要な経済財政にかかわる政策をトップダウンで国民に押し付けるものであり、5回目となる今回も「小さな政府」をかかげ、社会保障の給付削減と公務員の定員・人件費の縮小など、国民に痛みを強い、公共業務をいっそう民間に解放して、「格差社会」をますます広げる許されない内容となっている。増税論議の前に「政府自らが身を切り、効率化を図ることが不可欠」としているが、国民のサービスをはがし、その上で負担を押し付けることは明らかである。
 
 経済財政諮問会議の議論の焦点となったのは、社会保障費の伸びを経済成長率よりも低く抑えるというものである。政府税調は「身の丈にあった社会保障でなければ持続可能でない」いっている。「身の丈」を経済規模だとすれば、日本の「身の丈」においては、ずっと大きな社会保障は可能である。しかしこれをテコに他の先進国と比べて今なお低い医療などの社会保障費をさらに大きく押さえ込もうとしており、今後の医療制度の改悪とあわせて決して認めることはできない。
 
 公務員の総額人件費の削減を中心的柱にすえている。ひとつには、地域給導入や能力成果主義の導入を柱とした「給与構造見直し」という賃金引き下げであり、自治体労働者を直撃するものである。
 もうひとつは、国・地方ともに定員の「純減目標」をかかげ、人口1000人あたり、仏96.3人、米80.6人、英73.0人、日35.1人と、先進国の中で最低の水準の公務員数を、さらに削減しようとするものである。これを実施すれば市場化テストの本格的導入など、営利企業が公共サービスに大きく参入し、国民の権利を守るべき業務が、営利目的に変質する。これは結果として国民に痛みを押し付けるものである。
 これらのことを通し「平成18年度の予算や地方財政計画から順次反映させる」としている。
「三位一体改革」の最終年として「地方団体の安定的な財政運営に必要な地方交付税、地方税などの一般財源の総額を確保する」としているが、「地方歳出を見直し、抑制する」ことには変わりはない。しかも期間終了後も「2010年代初頭における基礎的財政収支の黒字化を目指して」「歳出削減に引き続き強める」としている。これでは地方交付税の財源保障機能は守れないし、人件費も含め地方の住民サービスはますます小さくなるばかりである。

 骨太と同日に公表された「政府税調」の報告では、所得税・住民税の給与所得控除の見直し、配偶者控除、扶養控除の見直しを盛り込んだ。定率減税廃止もあわせ所得税・住民税の給与所得控除の半減、配偶者控除、扶養控除の全廃が実施された場合、年収500万円の4人家族でみると年間42万円の増税となり、国民に大きな負担を押し付けるものとなっている。また「骨太方針2005」は、「国民負担の増加をめぐる議論はいずれ避けられない」として、消費税増税を宣言している。
 しかし整備新幹線の全線着工や関空二期工事など公共事業のムダ遣いを温存し、5兆円の軍事費は聖域としており、これを削って社会保障や地方財政の財源に充てるべきである。どうしても財源を必要とするならば、金持ちや大企業のために減税した所得税などの累進課税を元に戻すべきである。

 小泉構造改革は、労働者と自営業者、民間労働者と公務労働者を分断し、大増税と大負担を押し付けるものである。自治労連は、こうした分断を許さず、大きな共同を追求することを通じて小泉構造改革と正面から対決し、医療、社会保障を守る先頭に立つことを改めて表明するものである。それは6月19日の「意見広告」の立場であり、国民とともに「こんな地域と日本をつくりたい」、「民主的行政改革」の旗をかかげ、公務・公共サービスを守り、住民に信頼される公務労働の確立をめざして断固たたかうものである。
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