「年間1800時間」の目標を放棄

労働時間等改善措置法案

 正社員労働者の労働時間がじわじわと長くなっています。にも関わらず政府は、時短促進法を廃止し、時短政策から撤退する考えです。

削除される「労働時間短縮」

 時短促進法は、「年間総実労働時間1800時間」の政府目標を達成するため、1992年につくられた時限立法。来年3月での廃止が決まっています。
 それに代わる法律が今国会に提出されている「労働時間等改善措置法」。建前では、時短促進法の「改正案」ですが、実態は時短政策投げ捨て法案です。
まず、法律名と条文から「労働時間短縮」の文言を削除。法律の目的も「労働者がその有する能力を有効に発揮することができるように…」と労働時間延長すら容認する内容に変更されます。 「労働時間短縮推進計画」の閣議決定も廃止され、厚労相の「労働時間等設定改善指針」に格下げされます。


年間総労働時間・2000時間を突破

 では、政府が時短の目標を降ろすほど、日本の労働時間短縮は進んだのでしょうか? まったく逆です。 最近10年間の年間総労働時間は、95年の1909時間が04年には1840時間に50時間以上も短くなっています。しかし、これはパートタイム労働者などを含めた数字。90年代まで11%程度だったパートタイマー比率はいま20%超。「短時間労働者の増加による『見かけ上の時短』」(社会経済生産性本部)に過ぎないのです。
 フルタイム正社員を見ると、ここ数年間の労働時間は逆に増加。昨年は2020時間を超えました。有給休暇の取得率も、93年の56%をピークに下落していて、2000年からはずっと50%を下回ったままです。

成果あがるまで働かせたい!

 労働時間が長時間化しているいま、なぜ時短促進法を廃止するのでしょうか。 昨年暮れ、労働政策審議会は、労働側委員の反対にも関わらず時短促進法廃止の建議をまとめました。その建議には時短政策中止の理由が「時間ではなく成果によって評価される仕事が拡大する中で……労働者が着実に成果をあげられるようにしていく」とあけすけに語られています。
 言い換えれば、成果主義のニンジンで労働者を馬車馬のように働かせたい時に、「労働時間短縮」なんて言ってられないということ。経済界の意向に沿った時短促進法の改廃であることは明白です。
 労働時間がさらに長時間化し、過労死やメンタルヘルスの悪化に拍車をかけるのは避けられません。(連合通信)
 
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