核兵器廃絶求める世界の力が広島、長崎に

海外から最多の参加者

原水爆禁止2005年世界大会

 原水爆禁止2005年世界大会・広島が8月4日から3日間、広島市内で開かれました。被爆60年の今年、海外から各国政府代表を含む過去最高の264人(29カ国、8国際・地域組織)が参加し、国内からの参加者と合わせて8000人が核兵器廃絶に向け国内外での共同と連帯を広げることを誓いあいました。 開会総会では日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の坪井直代表委員が「被爆者にとっては毎日が8月6日。平和のため、核兵器廃絶のため、全身全霊をかけてたたかう」とあいさつ。
 安斎育郎立命館大学教授が国際会議宣言の内容を報告しました。マレーシアのタン・セン・スン外務次官とワリード・アメハド・ハッガッグ駐日エジプト大使館書記官が特別発言し、核保有国に核軍縮を迫る国際世論をつくろうと呼びかけました。
 「世界の平和運動から」では5人の海外代表が発言しました。アメリカフレンズ奉仕委員会のメアリー・エレン・マクニシュ事務局長は「日本被団協をノーベル平和賞候補に推薦しました。被爆者のみなさん、米国民と世界の声を1つにするため励ましと勇気を与え続けてください」。フランス平和運動のピエール・ビラール共同議長が「今年はフランスから160人が参加した」と発言すると、会場から大きな歓声がわきました。
 東京から反核トラックで行進してきた建交労の青年ドライバーや、80メートルもの巨大横断幕を手にしたフランスの若者らが大きな拍手を浴びながら登壇。全労連の小川薫青年部長は「核兵器も戦争もない、もうひとつの世界をつくる新たな一ページを開くため、青年は全力をあげよう」と呼びかけました。


 協力し合い核廃絶へ 各国政府代表とNGOが討論

 原水爆禁止2005年世界大会・広島2日目の8月5日、広島市内では「核兵器のない平和で公正な世界へ行動と共同を」「世界の反核平和運動との連帯」「戦争する国づくりと憲法九条、基地、自衛隊」をテーマにした分科会や原爆遺跡めぐりなどが行われました。
 約300人が参加したフォーラム「政府代表・NGOとの対話」では核兵器廃絶を求めるマレーシアなど非同盟諸国、エジプトやスウェーデンなど新アジェンダ連合の政府代表・国会議員、国内外で草の根の反核運動に取り組む人びとが、核兵器廃絶にむけて政府と市民の協力などについて活発な討論を行ました。
 各代表はNPT(核不拡散条約)再検討会議の問題点を指摘。エジプトのワリード・アメハド・ハッガッグ駐日大使館書記官は「核保有国が2000年の核廃絶の『明確な約束』を守らなかったことが失敗の最大の原因」と批判しました。
 神奈川県から参加した女子大学生は「次回2010年のNPT再検討会議を広島で開催してはどうか」と提案したのに対し、スウェーデンの国会議員カイ・ノードクイストさんらが「いい考え。世界の政治家は60年前に広島で何が起きたのかを知るべきだ」。 今後の核兵器廃絶の道筋についても話し合いました。 アラブ連盟のモハメド・エゼルディン特別顧問は世界の人びとへの粘り強い働きかけが重要だと強調。世界平和評議会のロメシュ・チャンドラ名誉議長は「政府とNGO(非政府組織)との共同と行動が必要。被爆者がリーダーシップをとる日本の運動は重要」。
 大会関連行事として4日夕、市内で開かれた「核兵器なくそう世界青年のつどいin広島」には80人以上の海外代表も含め、3000人の青年が参加しました。


 被爆60周年ヒロシマデー集会に9000人

 8月6日には、60年前に被爆した8時15分の時間に合わせ原爆慰霊祭が平和公園で行われました。
 ここで秋葉広島市長は「継承と目覚めの刻」「被爆者の志を受け継ぎ、核兵器のない世界を実現するために行動する」よう呼びかけました。
 3日目には原水爆禁止2005年世界大会・広島の被爆60年ヒロシマデー集会が、広島県立総合体育館で開かれ、例年を上回る9000人が参加。世界の人びと、NGO(非政府組織)・自治体・政府が力を1つにして「核兵器のない平和で公正な世界をめざし、行動と共同を強める」という「広島からのよびかけ」を満場の大きな拍手で採択しました。
 スウェーデン政府を代表して首相代理の国会議員カイ・ノルドクィストさんが特別発言。「核兵器を戦略的選択肢にさせてはならない。核不拡散条約を強化して核軍縮を進めよう」との同首相のあいさつを伝えた。 海外の核実験・核開発による被害者らが次々に発言した。ロシアのミーリャ・カビロワさんは核施設での放射能事故を報告し、「被爆者のみなさんの痛みを共有する。再び過ちを繰り返させないように全力を尽くそう」と述べました。
 広島県被団協の吉岡幸雄事務局長は「肉が腐り血が噴き出した痛さは忘れられない。再び過ちを繰り返さないためにも憲法九条を変えさせてはならない」。ブラジル在住の被爆者、盆子原圀彦さんは「日本政府は在外被爆者の残り少ない命を国内の被爆者と同等にあつかってほしい」と訴え。 医師の肥田舜太郎さんは数十年たっても放射能被害に苦しむ被爆者の実情について語った。
 日本山妙法寺の木津博充上人、作家の那須正幹さんが連帯あいさつ。青年、女性、各団体の代表が登壇して、核兵器廃絶に向けた決意を表明しました。大阪の大学生は「これが私の出発点。伝えるということを教えてくれた被爆者のみなさん、ありがとう」と述べました。
 府職労の参加者は「海外からの参加者と心が通いあったようで本当にうれしい」と語っていました。


「国連・各国政府への手紙」採択 長崎で閉会集会

 原水爆禁止2005年世界大会は8月7日から3日間、長崎市に会場を移して開かれました。同日開かれた「長崎のつどい」には4500人が参加。会場では女性や若者が目立ちました。 来賓あいさつした長崎市の伊藤一長市長は、核兵器廃絶を願う人びとの大きなネットワークが民族や宗教を超えて広がっていると指摘。非核三原則の法制化や非核地帯の創設、核兵器廃絶に向けた運動の強化などを訴えました。
 日本青年団協議会の岡下進一会長は「思想信条の違いを超えて核兵器完全禁止を実現しよう」とあいさつし、各国首脳からのメッセージも紹介されました。 主催者報告した安斎育郎世界大会実行委員会代表委員は「日本政府は口では核兵器廃絶を唱えながら、安全保障を米国の核政策に依存する矛盾した政策をとっている」と批判。
 海外からの参加者を代表して立ったフランス平和運動のソフィー・ルフェーズさんは「被爆者の証言に勇気をもらった。原爆が落とされた街で何が起きたのかを考えながら歩き、核兵器廃絶のたたかいは正しいと確信できた」と述べました。

●分科会で活発に討論
 長崎での大会2日目の8日、10の分科会やフィールドワークなどが市内を中心に行われました。
 「核兵器廃絶─アジア・日本の平和」分科会には約200人が参加。フィリピンのモロ青年専門家ネットワーク議長のバイボン・サンギド、韓国の平和ネットワーク運営委員のイ・ジョンキュ、中国人民平和軍縮協会副秘書長のワン・チャンヨン、婦人国際平和自由連盟国連代表のジーン・バータイン、日本原水協常任理事の新原昭治さんらが討論しました。
 イさんは米国が北朝鮮の核問題を口実に朝鮮半島の緊張を高めていると指摘、「日本は東北アジアの非核化構想に加わるとともに、非核三原則で米国の核政策をけん制してほしい」。
 サンギドさんはフィリピンでの米軍基地撤去のたたかいを紹介し、「日本も続くことを期待する。重要なのは一人ひとりが憲法九条を守り核兵器廃絶の運動に参加すること」と述べました。
 新原さんは世界的に進められている米軍再編が核先制攻撃戦略に基づくものであることを強調しました。ワンさんは過去の戦争責任を否定しようとする日本の政治勢力の存在がアジアの不安定要因になっていると警告しました。


●閉会総会に5000人/国内外から決意表明
 長崎に原爆が投下されて60年目の8月9日、原水爆禁止2005年世界大会閉会総会・被爆60年ナガサキデー集会が市内で開催されました。5000人の参加者は今秋開かれる国連加盟国会議や国連総会で核兵器廃絶の道筋をつけることを求める「国連および各国政府への手紙」を採択しました。
 開会あいさつした熊谷金道全労連議長は「核兵器廃絶の国際世論をつくるためには日本での運動が決定的に重要」と強調。憲法改悪阻止と非核の政府実現のために総選挙に勝利することも訴えました。
 日本原水爆被害者団体協議会の山口仙二代表委員は「世界大会に各国政府代表が参加するなど運動は大きくなっている。『核兵器なくせ』の世論を世界に広げよう」と呼びかけました。 海外代表はそれぞれ、核兵器廃絶のため国連総会への働きかけ、日本国憲法が世界の平和に果している役割、若い世代への運動の継承などについて発言。国内参加者も「今年結婚した。子どもに核兵器のない世界を手渡したい」(JMIUの組合員)、「米軍基地強化に反対」(神奈川)と決意表明しました。

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