サラリーマン中心に12兆円の増税

年収700万円(4人世帯)で69万円の増税

政府税調が報告書

 「勤め人の懐狙い撃ち」(6/10付「朝日」)、「『増税』路線が加速する」(6/23付「京都」)などマスコミも大きく報じた、政府税制調査会(首相諮問機関)が6月21日に発表した「個人所得課税に関する論点整理」。その内容に大ブーイングが起こっています。年収700万円の4人世帯で年間69万円の大増税。消費税引き上げむけた「布石」ともされる、その内容を改めて見てみると…。

 
年収500万円世帯で「3・6倍」の大増税/えげつない逆累進

 まず、目に飛び込んでくるのは増税割合のとんでもない高さです。年収700万円の4人世帯(※妻は専業主婦、子ども2人のうち1人は16歳から22歳。以下、同じ)では、現行の年間税負担額「37万7千円」が「68万9千円」の増税となり、「106万6千円」へと「2・8倍」に。年収600万円の4人世帯では「3・2倍」に。年収500万円の4人世帯では「3・6倍」に。年収400万円の4人世帯では「5・6倍」に。そしてなんと年収300万円の4人世帯では「33・1倍」というとんでもない高さに達します。
 一方で、年収1000万円の4人世帯では「2・0倍」に。年収5000万円の4人世帯では「1・1倍」という具合で、絵に描いたような逆累進的な増税割合が見てとれます。

 
給料1カ月分以上の大増税/控除縮小・廃止で課税強化

 政府税調の石弘光会長が「就業者の8割を占めるサラリーマンに頑張ってもらうしかない」と述べているように、今回の増税計画はサラリーマンを狙い撃ちしたもの。目をつけたのが、税負担を軽減している各種控除です。
 所得税や住民税は賃金から基礎控除や給与所得控除、扶養控除、配偶者控除などの各種控除を差し引いた課税所得に対して掛けられます。したがって、この各種控除を縮小すれば、課税対象になる所得が自動的に大きくなり、税金も増えるというわけです。
 一番金額が大きくサラリーマンの必要経費にあたる給与所得控除は、年収のおよそ3割。しかし、「実際に計算すると1割もいかない。6〜7%」(会長)として大幅縮小の方向です。
 配偶者控除については、「結婚で担税力(税負担能力)が落ちるのではなくて、頑張る奥さんもいる」(同)という理屈で廃止。扶養控除は年齢制限による縮小、16歳から22歳の子どもが対象の特定扶養控除も廃止の方向です。すでに半減が決まっている定率減税は全廃されます。
 日本総研の試算ではこれらの控除廃止・縮小による増税は年間11・5兆円(給与所得控除を半分に縮小した場合)。所得層に関わらず、年収の7〜8%=給料1カ月分にあたる金額が増税になる計算です。

 
金持ち減税は中止せず/消費税増税との二者択一? 

 バブル末期の91年に26兆円余りだった所得税の税収は、05年時点で14兆円余り。政府税調は各種控除を廃止・縮小する理由として「財源調達機能の回復」をあげます。しかし税収半減という事態には、最高税率の引き下げなど金持ち減税が大きく影響しています。80年代前半の最高税率は所得税と地方税を合わせて93%でした。ところが80年代を通じて88%↓78%↓76%↓65%と引き下げられ、99年の税制改革で一気に50%へ。10数年の間に43%も税率が下がりました。また法人税も減税に次ぐ減税でいまや30%。
 税収確保機能の復元をはかるなら、こうした高額所得者や大企業への大減税を止めるのがスジ。ところが、政府税調の石会長は「働く意欲が薄れる」「企業が海外へ逃げる」と最高税率の引き上げを否定。「(所得課税最高税率)50%は結構高い…もっと下げなければ」という姿勢です。
 しかし、この説明は真っ赤なウソ。政府統計によっても、高額所得者の実効負担率は、主要国中アメリカに次いで低い水準。「働く意欲…」については何の根拠もありません。
 一方で、課税最低限は日本がいまや主要国最低。各種控除の廃止・縮小で、課税最低限はさらに引き下げられることになります。
 今回の増税計画には「所得税増税がいやなら消費税増税を」と二者択一を国民に迫り、07年度での消費税増税(10%以上)を実現したうえで所得税増税をすすめるとのシナリオが見え隠れしています。
 5千4百万人のサラリーマンの懐と家計を直撃し、日本経済も破壊する大増税計画をストップさせるために今こそ力を合わせるときです。

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