男女雇用機会均等法「改正」に向け

最終報告」を建議

前進面と残された課題

 厚生労働省労働政策審議会雇用均等分科会は12月27日、男女雇用機会均等法の見直しに向けて「今後の男女雇用機会均等対策について(報告)」(以下、「報告」)をまとめ、厚生労働大臣に建議しました。
 そのなかでこの間の運動を反映し、以下の前進面がありました。特に「間接差別」禁止については、差別の存在そのものを認めようとしない使用者側にも、一部とはいえ差別があることを認めさせ、明記することにしたことは、今後に大きくつながるものであり、これまでの運動の成果です。

前進面 
1.不十分ながらも「間接差別」を初めて明記したこと。        2.差別禁止の内容について、配置において権限の付与・業務の配分が含まれていることを明らかにし」、「降格、雇用形態又は職種の変更、退職勧奨及び雇い止めを追加」するとしたこと。3.労働基準法の産前産後休業以外の母性保護措置等、妊娠出産に起因する能率低下や労働不能を理由とする解雇その他の不利益取り扱いも禁止としたこと。4.妊娠・出産を理由とした妊娠中および産後1年以内の解雇は無効としたこと。5.セクシュアルハラスメントについて、男性も対象として事業主の措置義務規定とし、事後措置の一つとして「調停に付すこと」など、違反規定も含めて整備するとしたこと。6.@セクシャルハラスメント及び母性健康管理について調停の対象とするA企業名公表制度の対象として実効性の確保をはかったこと。
しかし、以下の点などの問題も多く残されています。

残された課題

1.「男女双方に対する差別を禁止する規定とする」としつつも法律名を「男女雇用平等法」としない。2.「とりわけ雇用の場において仕事と生活の調和が重要課題」としながら、法の目的・理念に「仕事と生活の調和」を規定していない。3.「間接差別」の禁止対象を @募集・採用における身長・体重・体力要件 Aコース別雇用管理制度における総合職の募集・採用における全国転勤要件 B昇進における転勤経験要件 の3つに限定し、省令で定めるとした。4.差別禁止の内容について、差別の温床となっている「雇用管理区分」はそのままとし、「賃金」をはずしたこと。5.ポジィティブ・アクション(積極的差別是正措置)の効果的推進方策について、企業への義務付けは行なわず、自主的な取り組みを推奨するにとどまった。6.セクシュアルハラスメント対策については、事前防止規定と事後の対応措置を併せた義務付けとしなかったため、悪質なセクハラ対策として疑問。7.@「苦情処理委員会」設置の義務化、A行政による救済機関の権限強化、B独立した紛争解決機関の設置、C違反の制裁措置等の実効性を確保する措置が取られていない。8.女性の坑内労働の規制緩和について「労使双方からの要求」として、母性保護の観点からの十分な議論を待たずに解禁としたこと。9.労働基準法上の母性保護規定は「引き続き検討」とし、「緩和」「撤廃」に含みを残したこと。
また、公務労働者へ適用や、労働基準法の第3条(均等待遇)・第4条(男女同一賃金の原則)について、雇用形態の違いも適用させるなど、大きな課題も残されたままとなりました。
 男女雇用機会均等法制定から20年。男女差別はさまざまに形を変えながら解消されずにいます。今回の改正で、直接・間接の差別禁止が実効あるものになるのではと、女性労働者を中心に審議会の傍聴希望が集中し、後半は毎回抽選になるなど大きな期待が寄せられていました。
 しかし、まとめられた「報告」は、自治労連などの要求を一定取り入れる反面、最大の争点となっていた「間接差別禁止」「均等待遇」等では実効性の薄い不十分なもので、6月の「研究会報告」からも大きく後退したものと言わざるを得ません。
 厚生労働省は、1月20日からの通常国会に、この内容での法案提出をめざしています。通常国会での審議にむけて、前回の均等法改正時の国会付帯決議や女性差別撤廃条約、ILO家族的責任条約(第156号)、北京宣言と行動綱領等、国際的な男女平等への到達点を踏まえ、国連女性差別撤廃委員会の「最終コメント」が生かされる形での実効ある男女雇用平等法への改正を求める運動が求められています。(自治労連速報より)

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