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府職労ニュース


出資会社方式の問題点
愛知県高浜市

 請負を装いながら、実態は相手先企業の指揮命令を受ける派遣という偽装請負。民間企業での広がりが大きな社会問題になっているが、自治体職場にも既にまん延していることが自治労連の調査でわかりました。自治労連は「公共性や専門性を確保すべき自治体に偽装請負・違法派遣はなじまない」とし、直接雇用への切り替えを要求しています。
 調査は今年1〜2月に実施しました。愛知県高浜市と京都府京丹後市、広島県安芸高田市の3市を訪問、自治体の担当者らにヒアリングを行い、資料を収集しました。
 高浜市を選んだのは、全国に先駆けて市が100%出資する総合請負会社を設立、業務のアウトソーシングを進めてきた経緯があるためです。森貞述市長は市場化テストを推進するために政府が設置した「官民競争入札等監理委員会・地方公共サービス部会」の委員も務めています。
 業務委託の分野では、大新東など全国展開している民間企業とあわせ、こうした自治体出資の請負会社が増えているといいます。そのモデルが高浜市。いま全国から「高浜もうで」の視察が相次いでいるといいます。


●窓口業務を委託
 自治労連調査によると、同市の「高浜市総合サービス株式会社」は、正規・臨時をあわせ236人の社員を抱え、施設の管理運営をはじめ給食サービスや病院売店まで幅広く市の業務を受託しています。売上高は6億3500万円。
 調査団は市役所の窓口業務に注目しました。現在12人の社員が配置され、収納の2人と通訳1人のほかは委託(請負)。市は「現場で指示を受けて仕事ができるようになるまでは派遣で、自立して仕事ができるようになったら委託にしている」といいます。
 窓口の1〜2列目には同社社員が座り、その奥で市職員が執務する形です。
 委託契約で働く社員に市職員が指揮命令していないのかどうか、「窓口業務」がそれ自体で完結する業務なのか、が問題になります。この点で調査団は、「届出受理や証明書発行は公権力行使にかかわるから常に背後にいる市職員に決済を求め、書類の不備などについてはそのつど指示を仰ぎ対応しなければならない」と指摘。市職員の指揮監督の下にあるのは明らか。
 委託といっても実態は限りなく派遣に近い。偽装請負の疑いが濃厚です。


●竹中答弁にも違反
 さらに問題なのは、民間事業者が窓口業務全般を担当していること。同市では、本人確認、住民基本台帳の端末操作、手数料の収受、交付や異動届の受理まで行っているという。
 市場化テスト法案の国会審議で当時の竹中平蔵総務大臣は、「個人のプライバシーの保護」の観点から窓口業務については「受付と引渡し」に限定すべきとしたうえで次のように述べました。
 「住民基本台帳全体へのアクセスを特定業者が行うということは起こりえない」「取り次ぎの部分だけが任されているわけで、それはアクセスしたら正に定められていないことを勝手にやったということになる」
 つまり、住民基本台帳へのアクセスはできないと明確に指摘しています。
 調査団もこの点を重視し「高浜市の場合は市場化テスト法によらない民間委託であるが、政府答弁に照らしても(同市の実態は)明らかに違法」としています。 
 市場化テストにかかわる政府組織の委員まで務めている市長のもとで、こうした政府答弁無視が行われていることになります。
 従来の枠組みにとらわれない住民施策などで注目される高浜市だが、業務のアウトソーシングに関しては法令順守の姿勢が問われているようです。


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