被災者の生活再建支援制度の充実を

11年目の阪神・淡路大震災メモリアルで誓う

    1月17日、阪神淡路大震災から11年がたちました。6434人の命を奪った震災の爪あとは表面的には消えたかに見えますが、人々の心にはいまだに消えない傷跡が残っています。11年目を迎えた神戸や淡路では、追悼式やつどい、集会がおこなわれました。兵庫復興県民会議は5時46分、神戸の町が見渡せる諏訪山公園で早朝追悼集会を開催し、「大震災11年の長田を歩く」「追悼市民の集い」、メモリアル集会などおこないました。
 
 
ビルや公園はできたが、人が帰ってこない町・長田
 

 11年目の神戸市長田区、全壊した家屋が取り払われビルが建ち、公園ができました。しかし、人々は戻って来れません。町がなくなりました。兵庫復興県民会議のメモリアル集会で、長田区の戎さんが長田の今の姿を語りました。
 「震災の翌日に主人が脳梗塞で倒れました。11年間看病してきましたが、1月6日になくなりました。この間、女手一つでケミカルシューズをつくってきましたが、業者は借金返済に追われ自殺者が後を絶たない」と苦労を語ります。「もし、震災の直後に少しでも義捐金があればどんなに助かったか」と政府の住宅復興や経営支援への冷たさを訴えました。
 
 増える自然災害被災者 進まない生活再建

 一昨年の台風23号による水害、昨年の14号台風による宮崎での被害、福岡や鳥取、中越での地震、三宅島の噴火、昨年から今年にかけての大雪被害、自然災害が後を絶ちません。
 メモリアル集会には、台風24号の水害にあった兵庫・但馬、新潟の中越、三宅島からも被害の実態や生活再建の取り組みが報告されました。
 代表が共通して報告したことは、政府や自治体の生活支援への冷たさです。政府の被災者生活再建支援制度が新設されたものの、所得制限や支援対象を大規模半壊以上に制限していたり、個人財産は支援できないとの理由で住宅改修に使えなかったり利用しにぬくいものになっています。
 
 
「人間尊厳が踏みにじられている」人間復興へ新たな決意
 
 自治体の復興策にも疑問の声が相次ぎました。仮設住宅から復興住宅などに移転した高齢者の孤独死が絶えません。復興住宅が開始された2000年から05年間に孤独死した被災者は396人、昨年1年で69人の方が亡くなりました。 被災者ネット代表の安田秋成さんの報告によると障害者や高齢者が行政から放置されている実態は痛ましい限りです。
 「82歳と77歳の姉妹が復興住宅で生活したが、2人とも認知症の症状があり、姉が亡くなっても妹は猛暑と悪臭の中で3週間以上も暮らしていた」「70数歳の母親と暮らしていたダウン症の48歳の男性は、母が亡くなってもなす術がわからず2週間以上も閉じこもっていた」「わずかの年金なのに復興住宅の家賃の高さ、水光熱費で生活費がなく飲まず食わず、脱水症で孤独死した70歳の方」 復興住宅での、生活援助員、高齢者生活援助員、見守り推進員などの充実が求められています。神戸空港の建設など大規模開発の裏で人間尊厳が奪われていっているのです。
 最後に安田さんが語った話が胸を打ちました。
 「政府、自治体は憲法にある『国民の生存権』、地方自治にいう『住民の生命・財産を守る』『住民滞在者の安全、健康、福祉を守る』ということを真剣に考えてほしい。これが震災11年、阪神・淡路大震災被災者の真実の叫びです」

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