非常勤職員の雇い止め無効

「著しく正義に反する」

国の機関で初の判決

 国の非常勤職員に対する雇い止めを無効とする初の判決が出された。1年契約を13回更新した女性への任用更新拒絶について、東京地裁は3月24日、「著しく正義に反し、社会通念上是認しえない」と判断。未払い賃金や慰謝料などの支払いを、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構に命じました。
 女性は89年、国の機関だった学術情報センターで働き始めました。同センターは2000年に国立情報学研究所に改組された際、非常勤職員の任用更新の上限を原則3年とすることとし、その方針に沿って03年3月、女性を雇い止めにしました。研究所は2004年4月、同機構の一員となりました。

 判決は公務員の任用関係にも権利濫(らん)用法理などが適用されるか否かについて、@期間満了後も任用が継続されると期待される特別な事情があるにもかかわらず任用更新をしない理由に合理性を欠く場合A不当、違法な目的で更新拒絶するなど、任命権者が裁量権の範囲をこえたり濫用があった場合B任用更新の拒絶が著しく正義に反し社会通年上是認しえない場合──など「特段の事情が認められる場合」には、「権利濫用・権限濫用の禁止に関する法理ないし信義則の法理により、任命権者は当該非常勤職員に対する任用更新を拒絶できない」と明記。権利濫用法理などが適用されるとしました。
 その上で、判決は同研究所が女性に対し任用更新期限(3年)を告知していなかったこと、任期満了後の再就職についても心配した形跡がないことをあげ、更新拒絶は著しく正義に反し社会通念上是認しえない、と結論づけました。

 判断にあたっては、「非常勤職員といっても任用更新の機会の度に更新の途を選ぶにあたっては、その職場に対する愛着というものがあるはずであり、それは更新を重ねるごとに増していくのも稀(まれ)ではない。そのような愛着を職場での資源として取り入れ、活性化に資するよう心がけることが日本の職場に重要」「任用を打ち切られた職員にとっては明日からの生活があるのであって道具を取り替えるのとは訳が違う。研究所においては、非常勤職員に対して冷淡に過ぎたのではないか。永年勤めた職員に対して任用を打ち切るのであれば、適正な手続きを踏み、相応の礼を尽くすべき」と厳しく批判しました。
 判決はさらに2004年4月に情報・システム研究機構の一員に移行した後も、任用関係が引き続き継続していると認定しています。 女性ユニオンが裁判を支援しました。

極めて画期的な判決

小田川義和国公労連書記長が談話

 非常勤職員の雇い止めについては、郵政や自治体を中心に多くの判決があるものの、労働者側が勝利したものはなかった。従来、裁判では非常勤職員は、日々雇用であり雇用継続は予定されていないものとされてきた。労働契約でないからと門前払いされるのが当たり前だった。
 今回の判決は結果として初めて、任用する側に権利濫(らん)用(法理)などを適用し違法性を認定した。極めて画期的な判決だといえる。
 さらに判決は、法人への移行に際して「別に辞令が発せられない限り…当該法人等の職員になるものとされ」と言っている。正職員に加え、非常勤職員についてもこの理屈で雇用関係が承継されるとしている点が注目される。この判断が確定するなら、国立病院機構の非常勤職員の雇い止め裁判にもプラスに影響するのではないか。

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