基本給・一時金はすえおき 寒冷地手当を削減

「地域給」など賃金制度の全面改悪打ち出す



くらし・地域経済破壊に拍車

 

 人事院は8月6日、 国家公務員の給与および勤務時間等に関する報告と勧告を内閣と国会に提出した。 今年の勧告には大きく4つの特徴がある。

「マイナス勧告許さない」 たたかいの成果

 第1は、 3年連続の基本給マイナスをゆるさなかったことである。 私たちは、 基本給の引き下げが、 公務労働者の生活を切り下げるとともに、 「賃下げの悪循環」 をもたらし、 民間労働者や住民のくらし、 地域経済に重大な影響を及ぼすものとして反対してきた。 公務・民間が力を合わせて、 賃金引き上げ勧告と最低賃金の引き上げを一体の課題として、 賃金底上げのたたかいに全力をあげてきた。  労働基本権制約の 「代償機関」 として、 公務労働者の賃金を引き上げる勧告を行わなかったことは、 生活改善を求める私たちの切実な要求からすれば不満である。 しかし、 3年連続の基本給引き下げの可能性が示唆されたもとでも、 それを許さなかったことは、 不法・不当な 「マイナス勧告」 をこれ以上続けさせないという、 私たちの運動の成果として評価できる。
 また、 一時金については1999年以来5年連続、 計0・85月もの引き下げが行われてきたが、 今回、 支給月数の引き下げを許さず、 年間給与の引き下げを6年ぶりに許さなかったことはたたかいの反映である。 一方で、 大企業が空前の利益をあげ、 労働者の一時金が一定引き上げられているもとで、 今回、 支給月数を引き上げる勧告を行わなかったことは、 私たちの生活実感と要求からすれば不満である。

職員の生活実態無視した寒冷地手当の改悪
 
 第2は、 寒冷地手当について支給対象地域の大幅な切り捨てを勧告したことである。 寒冷地手当はそもそも、 冬季における燃料費など寒冷地域に勤務する職員の生活費を補充するものであり、 今回の改悪は、 職員の生活実態を無視した不当なものである。 一方で、 @ 「北海道以外は対象外」 という人事院の当初の考え方を修正させ、 本州の寒冷積雪地の気象条件を考慮して指定解除地域を縮小したこと、 A激変緩和の措置として、 大幅な経過措置を設けさせたことは、 私たちのたたかいの反映である。

「三位一体」改革に追随した給与構造の見直し

 第3は、 「地域の実態を反映した給与」 と 「職務・職責の重視、 実績反映」 をめざす給与制度についての検討を勧告したことである。 地域給与の見直しについては、 @全国共通俸給表の水準を引き下げるとともに、 民間賃金の高い地域には、 上限20%程度の地域手当を新設し支給する、 A地域別俸給表等の方式の導入、 の2通りの検討方向が示された。 そもそも、 給与決定の原則にない 「地域給」 という考え方を公務員賃金に持ち込むこと自体が問題である。
 そして公務員の給与などを地域の地場産業の賃金にあわせることは、 一層その地域の労働者の賃金を引き下げることにつながり、 地域経済にも重大な影響を及ぼすものである。
 また 「報告」 の中で、 「専門スタッフ職俸給表の新設」 「俸給表構造の見直し」 「査定昇給の導入」 などにふれるとともに、 手当について 「勤勉手当への実績反映の拡大」 「本府省手当の新設」 などの検討方向を示したこと、 公務員の人事管理について 「能力・実績」 にもとづく人事管理の推進について言及したことは、 職場における差別・分断を強めるものであり反対である。
 一方で、 政府は 「骨太方針2004」 で、 地方公務員の給与問題を 「地方行革の推進」 「三位一体改革」 と関連づけて、 @いっそうの 「地方行革」 の推進、 A地方公務員給与の大幅カットなどで税財源の移譲なしで 「地域の真の自立」 ができるとの立場を表明している。
 今回 「給与構造・地域給与の見直し」 について踏み込んで言及したことは、 人事院勧告が地方公務員の給与に大きな影響を与えることを考慮すれば、 人事院が政府の不当な介入を手助けするものとして、 絶対に許されない。

勤務時間の弾力化・多様化子育て支援などにも言及
 
 第4は、 「多様な勤務形態に関する研究会」 の中間まとめを受け、 勤務時間制度の弾力化・多様化の必要性について基本的な考え方を示すとともに、 次世代育成支援の観点から、 子育て支援・介護について言及したことである。
 恒常的な長時間勤務を軽減するための 「早出・遅出勤務の活用」 「勤務時間の弾力化」 という内容は、 労働時間短縮の根本的解決策にはなりえず、 公務員の仕事のあり方を歪めるものである。
 また、 子育てや介護を支援する内容として、 育児を行う職員の部分休業の拡充、 短時間勤務制の導入などにもふれられた。
 これらの内容は、 男性も女性も安心して仕事と家庭が両立できるよう求めてきた私たちの要求を一定反映したものではあるが、 今でも、 権利を十分に行使できない状況があるだけに、 こういった前進的な内容を実効あるものとするためには、 様々な課題があることを指摘せざるを得ない。
 人事院勧告が出されたもとで、 京都府人事委員会に対して給与カットの一刻も早い中止など、 生活改善につながる勧告を出すよう求めるとともに、 引き続く賃金確定闘争に全力をあげる。 とりわけ官民一体の共同を広げ、 全労働者の賃金を底上げする運動を強める。
 また、 小泉 「構造改革」 と真正面から対決し、 不況打開・雇用確保、 地方財政危機打開など、 府民との対話と共同をいっそう広げ、 職場から要求実現めざして奮闘するものである。
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