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2016年05月02日

「平和国家」ブランドが危ない
〈日弁連9条シンポから〉

航空労働者や元船員が訴え

 日本弁護士連合会が4月23日に開いたシンポジウム(憲法9条を変えるとはどういうことか、4月26日付で既報)では、航空労働者や元船員らが強い危機感を表明した。集団的自衛権の行使として、自衛隊が海外で武力行使や米軍の後方支援を行えば、「平和国家日本」のブランドが通用しなくなるという指摘だ。
 要旨を紹介する。

▲「憲法は安全の盾だ」/航空労組連絡会 津恵正三事務局長

 安保関連法は、航空の安全を根底から覆すとんでもない法律だ。民間航空はこれまでも、たびたび紛争や戦争に巻き込まれてきた。テロや誤認によって撃墜されたこともある。

 イラクのクウェート侵攻(1990年)の時には、航空機で避難した日本人を含む人々が乗員とともにイラク政府に拘束。監禁状態で、いわゆる「人間の盾」に利用された。機長は「殺される」と思ったそうだ。

 航空産業にとって平和は不可欠。兵員や(戦争のための)物資を運べば、航空機は攻撃対象になる。日本が戦争に協力するということは、テロ対象に立候補するのに等しい。自ら対立状態に踏み込んで、乗客の安全を犠牲にしていいのかどうか。
 憲法は安全の盾である。

▲「海外勤務者が心配」商社9条の会 世話人の上田裕子さん

 商社のイメージは必ずしもよくはないけれど、貿易立国の日本では必要な仕事であり、海外で働く商社労働者は少なくない。

 日本が武器輸出三原則などでつくりあげてきた「平和ブランド」を今、改めて確認すべきだと感じている。日本が平和国家だということは広く知られていて、だからこそ私たちは仕事ができた。それが最近は通用しなくなるのではと懸念している。

 世界に誇った平和ブランドをけがす安倍政治は許せない。私たち9条の会はもともと勉強しようと集まった会だが、行動する会へと成長してきた。微力だが無力でないことを信じ、戦争法を葬り去ることをめざしてがんばりたい。

▲「日の丸印は危険に」外国航路元航海士 本望隆司さん

 20歳で船員となり、大型タンカーで中東から石油を運ぶ仕事に従事してきた。

 イラン・イラク戦争(1980~88年)の時には、24万5000トンのタンカーで現地へ。当初ペルシャ湾は静かだったが、84年になると情勢は一変していた。イランの石油積出港をイラクが爆撃、輸出が困難になったイランが今度はタンカーを攻撃し始めた。

 当時、日本では「石油が入ってこなくなる」と大騒ぎだった。輸送をどうするか。海員組合と船主協会と国の三者で連絡会議をつくり、一隻一隻安全を確認しながら航行することになったのだ。われわれに対しては「航行は昼間だけ、夜はダメ」「船体に日の丸を付けろ」と指示された。

 それは、日本船なのだから攻撃するなというメッセージだった。憲法9条があり、両国とも日本を敵国とは見なしていなかったからできたことだ。9条は石油輸入を守り、ひいては国民生活を守ったわけだ。

 しかし、米国側に立って(戦争)協力することを明確にした今では、この理屈はもう通用しない。

2人のジャーナリストが警鐘

 日弁連シンポには、2人のジャーナリストも参加して、思いを語った。

 雑誌『週刊女性』編集部の徳住亜希さんは、昨年に続き今年も10ページの憲法特集を組み、読者に好評だったことを報告した。特に小さい子を持つ母親や年配者からの反響が大きかったという。憲法は平和の問題だけでなく、暮らしや雇用の問題に関わっていることも重視したと語り、その上でこう述べた。

「平和を訴えることが悪いイデオロギーだという空気がつくられつつあるように思う。9条の理念や生活とのかかわりを伝えていくことは大切であり、女性誌だからこそこういう問題点を提起していきたい。安倍首相は突っ込みどころ満載。ジャーナリズムとしての役割を果たしたい」

▲秘密保護法が本格始動

 ジャーナリストの青木理さんは、秘密保護法の下で「メディアの萎縮状況は確かにある」としつつも、まだ法本来の威力を発揮していないのではないかと問題提起した。

 しかし、自衛隊が海外に出て行き、現地で恨みを買うことになれば状況は変わるだろうと予測した。

 一つは、不幸にも自衛隊員が死亡するケース。もう一つは日本で大規模なテロが起きるケースだ。

「そうした場合、新聞やテレビがどう報じるかは想像がつく。犠牲者の家族や友人の悲しみのコメントだけでなく、治安力強化を求める主張や記事であふれかえるだろう。安保法や政府を批判すれば『テロリストの肩を持つのか』『国賊だ』と批判される。そのときになって秘密保護法が本領を発揮するのではないか」

 そして、あれもこれも秘密にすべきだという方針が浸透していく。青木さんは「異端を許さないという風潮が強まり、僕のような者がものを言える場はなくなるかもしれない。それでも警告を発信し続けたい」と語った。(連合通信) 

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