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2016年05月09日

「特殊な利益構造」に切り込む報道を
経済ニュースの裏側

コンビニビジネスの曲がり角

 コンビニ最大手セブンイレブン・ジャパンなどを傘下に収めるセブン&アイの鈴木敏文会長がこの4月、電撃的に退任した。引き金は、鈴木氏が主導した「井阪隆一社長の退任」案を取締役会で否決されたことである。

 創業家や米投資ファンドと鈴木氏側の確執は広く報じられたが、鈴木氏といえば「コンビニの原型をつくられた経営者」(ローソンの玉塚元一社長)。ところが、その根幹に迫る報道は意外と少ない。

 報道の基調は、「セブン&アイは2016年2月期決算で、5期連続で営業利益の過去最高を更新。だが、グループ内には対応すべき課題も抱える」(朝日新聞4月20日付)といったもので、課題に挙げられるのは、初の営業赤字になったイトーヨーカ堂や、不振が続くそごう・西武(百貨店)、通販の扱いばかりである。

 日経電子版は4月27日付「カリスマ退場でほくそ笑むライバル」と題する記事で、すぐれた商品開発力、陳列棚の空きを極力なくす仕入れ管理と物流網といった経営システムが、「セブンイレブンの強さの源泉」だと説き、より良い商品・サービスへの鈴木氏の強い拘りを付け加えた(松田直樹、豊田健一郎記者)。

 それは間違っていないが、見切り販売妨害をめぐる公正取引委員会の排除命令や、店長らが結成したコンビニ加盟店ユニオンに対する団交を命じた岡山県労委命令は、鈴木氏らが構築した「高収益を生むしくみ」に内在した問題を強く示唆している。

 そんななか、ネット版ではあるが「産経WEST」は4月20日付で、「独自の会計方式を駆使したコンビニという業態の特殊な利益構造」にもふれ、「鈴木会長が経営の一線から退いたことは、コンビニという業態が曲がり角を迎えているという暗示ではないか」と指摘した(岡田敏一記者)。

 多くの店主とその家族を苦しめる「特殊な利益構造」を前提にした人事抗争は、所詮、コップの中の嵐、にも見える。

 「近くて便利」が本部(や投資家)の収益だけでなく、そこで働く人たちの小さな幸せとどうすれば両立するのか。コンビニビジネスの持続可能性を確保するためにも、本部による優越的地位の濫用や労働法潜脱と紙一重の「特殊な利益構造」に切り込む報道が待たれている。(連合通信) 

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