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2016年02月09日

話題よぶ「ルポ老人地獄」
経済ニュースの裏側

はみ出し記者たちの傑作ルポ

 安倍政権は2017年4月、消費税を10%に引き上げようとしている。増税分を社会保障に充てることで、老後・暮らしの安心を支えるというのが、その大義名分だ。

 では、私たちの負担は報われるのか。

 そんな問題意識から、朝日新聞経済部の記者たちが老人介護、社会福祉、医療・年金の現場を歩きスタートしたのが「報われぬ国」という大型連載だった。このほど加筆のうえ、『ルポ老人地獄』(文春新書)として上梓され、早くも話題を呼んでいる。

 たとえば小規模デイサービス事業者が広く行っている「お泊りデイ」。利益は大きいが、男女一緒に雑魚寝、相次ぐけがや感染、介護保険の不正請求など、「現代の姥捨て山」の実態はすさまじい。福祉を食うビジネス、過酷な国保料取り立ても暴いた。

 政府や大企業に近すぎる記事が目立つ経済面で、「報われぬ国」は異色の連載だった。抗議を受け訴訟にもなり、一部訂正もあったが、果敢な報道にとって、抗議は「勲章」ともいえる。

 あとがきで松浦新記者は「経済部といっても官庁や企業などのいわゆる記者クラブに所属したことがない記者がほとんどで、私も含めて部内では少しばかりはみ出し者の集団だったかもしれない」と取材班を紹介し、「そのぶん、官庁や企業にまったく縛られず、自由な立場で取材に取り組めた」と連載成立の事情を明かす。

 地域の社会福祉協議会の試みに無料低額診療の実践、孤立ゼロをめざす自治体などと並んで、本書が伝える希望は、「少しばかりはみ出し者」の記者たちの取材に、介護や福祉の現場で苦闘する担い手たちが、勇をふるって真実を語るところにもある。

 日本福祉大・二木立学長が本書で言うように、介護職員不足の背景には、「地位と給料」の低さがある。制度政策要求という点でも、担い手の「地位と給料(賃金)」の改善という点でも、本書の問題提起は労働組合の課題に通じる。

 そしていつの日か、こういう仕事こそ、経済報道の「主流」になってほしい。(連合通信) 

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