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2016年12月01日

日本は人ごとでは済まない
タックスヘイブン問題

TJNのクリステンセンさん

 来年度の税制改正が話題になる季節。ビール税や配偶者控除など身近な問題に関心が高まるのは当然だが、グローバルな視点で税のあり方を考えてみることも必要だ。「世界的に公平な税制」を追及してきたNGOタックス・ジャスティス・ネットワーク(本部・英国)の創設者、ジャン・クリステンセン氏が10月末に来日。タックスヘイブン(租税回避地)などの課税逃れをどう是正するかについて語った。「日本も人ごとでは済まない問題だ」と警告した。講演要旨を紹介する(文責・編集部)。

▲日本にも付け回る

 大企業や富裕層の税逃れは、昔からあった。問題が肥大化したのは1970年代後半、米国のレーガン大統領と国際通貨基金(IMF)が金融市場の自由化を進めた影響が大きい。

 日本は規制法があり、他国に比べ、おおっぴらに租税回避はできない。しかし、西洋諸国の多国籍企業が税逃れしている付けは必ず回ってくる。タックスヘイブンとして利用されているアフリカや中南米の国々に、日本は多額の開発援助をしている。貿易立国の日本は、「将来的な市場」と見込んだ途上国が税逃れの形で搾取されている構造に抗議すべきだ。

 日本の市民も人ごとではない。税逃れしている外国企業との競争を理由に、産業界が今以上の法人税減税を政府に求めたらどうなるか。消費税はさらに増税され、医療や福祉分野の予算を削る緊縮財政が敷かれるだろう。

▲世界のゆがみ正そう

 現時点で多国籍企業や富裕層による税逃れの累積金額は20兆ドル(2280兆円)にもなる。

 私たちは税の公正、つまり世界の富を適切に再配分するために何をなすべきか。

 多国籍企業への情報開示が必要だ。国別の事業報告書提出と関連会社の実質所有者の開示については、G20(金融・世界経済に関する20カ国首脳会合)が2020年の実現をめざすことで合意している。しかし、開示対象を税務当局に限定し、一般市民にまで広げることに抵抗する国がある。日本もその一つ。企業のロビイングの結果だ。日本市民はそこへ圧力をかけるべく運動してほしい。

 こうした施策が奏効すれば、租税回避地として搾取されている途上国は経済力をつけ、先進国と対等な立場での国際貿易が可能になる。かつての属領が宗主国に利用されるという不平等性を正すことができる。

 租税回避の合法化によって、世界貿易の形はゆがめられてしまった。富める企業や株主がより富み、政治にも影響力を持ってきた。このゆがみを正そう。租税回避は人間が生み出したものであり、人間の力でやめさせることは可能だ。(講演会は「公平な税制を求める市民の会」が主催)

ジャン・クリステンセン
 会計事務所や英王室属領ジャージー島で経済アドバイザーとして勤務。多国籍企業や富裕層の租税回避の実態を知る。2003年にタックス・ジャスティス・ネットワークを創設。現在、ネットワークは80カ国に広がり、各地の市民運動やジャーナリストと情報交換を行っている。トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』で、「他のどの組織よりも、財政の公正さを議題の中心にすえて活動」する組織として紹介されている。
(連合通信) 

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