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これ以上、何を節約するの? |
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バッシングにどう抗するか |
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■基準引き下げに悲鳴 最後のセーフティーネット(安全網)である生活保護制度を縮小する動きが止まらない。これまでも生活扶助、住宅扶助、冬季加算などが削減され、申請手続きの厳格化も行われた。今後も政府は一層の見直しを検討中だ。こうした流れにどう対抗していくかを考える集会が、7月18日に東京で開かれた。 集会を開いたのは、弁護士や司法書士、行政の担当者らでつくる「生活保護問題対策全国会議」。設立9周年を記念した催しで、タイトルは「『健康で文化的な生活』はどこへ? 権利としての生活保障を求めて」である。 ▼新たな見直しも検討中 物価下落などを表向きの理由に、2013年以降に実施された削減額はトータルで約890億円。「適正化」のためというが、ギリギリの生活を強いられてきた利用者に耐え難い苦痛を与えている。 精神疾患を抱えているため働けず、生活保護を利用している女性は「ガス・水道代を節約するため風呂はシャワーだけ。それも毎日は無理。安い食材を求めてスーパーをはしごしています。友人との食事会や冠婚葬祭の付き合いも我慢。適正化っていうけど、これ以上何を節約しろっていうんですか」と憤る。 現在、引き下げは憲法25条が保障する生存権に違反しているとして、全国で約900人が裁判に立ち上がっている。原告たちの生活実態調査では、食費や水光熱費にしわ寄せがいっていることが分かる。 日本福祉大学の山田壮志郎准教授が原告600人を含む653人の生活保護利用者に、基準切り下げ後の生活を調べ、集会で報告した。自由記入欄には「1日2食にした。とにかく食費を減らさざるを得なくなった」「光熱費、食費、シャンプーなどの雑費を抑えるため、『汚い、くさい、不潔』と言われている」「正月のお祝いができなくなった」などの声があふれている。 しかし、生活保護切り下げは終わっていない。全国会議事務局長の小久保哲郎弁護士はこういう。 「政府の社会保障審議会生活保護基準部会では制度見直しが検討されている。7月の部会では、子どもがいる世帯の扶助・加算の検証など3点が検討課題に挙げられた。民主党政権時に復活した母子加算の再引き下げなどが狙われている」 ■伝え方も問われている 生活保護問題対策全国会議の9周年集会では、制度利用者へのバッシングが止まない現状と、その中で「生活保護制度の利用」が権利であることをどう伝えていくかも議論になった。 ▼このままでは共倒れ 漫画家のさいきまこさんは、『神様の背中』など貧困と生活保護をテーマにした漫画を描いている。集会で講演したさいきさんは、自身が「貧困」を取り上げるようになった理由をこう述べた。 「2012年に芸能人が母親のめんどうをみずに生活保護を受けさせているというバッシングがありました。離婚後の私の生活もギリギリ。このまま老後を迎えたら、息子は『親の扶養は当たり前』という圧力にさらされる。それで息子の人生はどうなるのか、共倒れするのではないかと、他人事ではなくなりました」 貧困が原因とみられる心中や孤立死が後を絶たない。生活保護利用へのバッシングや、ためらいが背景にあると指摘される。 ▼保護に値しない人? さいきさんは、貧困問題の伝え方について、最近のメディアの姿勢を検証した。報道のパターンとしては、「身につまされ型」「かわいそうだ型」「問題掘り起こし型」などがあるとしつつ、「かわいそうだ型」のリスクを指摘。 「子ども食堂を訪れたある母子を紹介した記事があります。でも、(生活保護など)支援の手段がないのかどうか、今の役所の対応は正しいのかどうかなどが検証されていない。それでいいのでしょうか」 さらに、困窮している人の中で「健気な人」は保護に値するが、健気でない人は保護に値しないという風潮が強まっていることにも懸念を示した。 働かずに飲酒する、パチンコをする、金銭管理ができない、子どもに食事を与えず放置する……。こうした人々を「ダメ人間」と決め付けることに報道が手を貸していないかどうか、と問いかけた。 ▼知識として伝える 「その貧困の背景になにがあるのか、DV(家庭内暴力)や依存症などの病気があるかもしれない。人は自分が経験していないことを想像するのは難しい。報道はそこを知識として伝えていく必要があるのではないでしょうか」 全国会議代表幹事の尾藤廣喜弁護士は「生活保護などの生活保障は憲法25条に基づく権利なのだということを再度確認したい」と述べた。運動する側には市民の共感を得る訴えが必要と指摘した。 生活保護バッシングや制度への誤解が少なくない中で、報道する側の姿勢も問われている。(連合通信) |
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