京都府職員労働組合 -自治労連- Home 情報ボックス 府政NOW 京の写真館 賃金 料理 大学の法人化



2016年07月.04日

今こそもう一つの欧州を
〈英国のEU離脱問題〉

ベルギー運輸労組 フランク・モリールズ委員長

 英国の欧州連合(EU)離脱という国民投票結果は何を意味しているのか、労働運動は何をなすべきかについて、ある労組幹部が書いた一文を紹介する。筆者はベルギー運輸労組(BTB)のフランク・モリールズ委員長。国際運輸労連(ITF)本部の浦田誠・内陸運輸部会長が翻訳し、要約した。

▼EUの恩恵はあるのか

 英国が欧州連合(EU)離脱を決めた今、欧州は重大な岐路に立っている。英国でごく普通の人たちがEUに背を向けたが、他の「欧州人」の多くも同じように考えている。この警鐘を無視してはならない。

 かつての欧州連合構想には希望があったが、今日はソーシャル(社会的)ダンピングがまん延し、自由化政策で公共サービスが縮小され、規制緩和によって社会的保障がないがしろにされている。普通の人々にEUの恩恵を納得させることは難しい。

 一方、社会的権利を守ろうとする加盟国は攻撃される。交通運輸産業に最低賃金を適用したいドイツとフランスに対し、欧州委員会は法的措置で対抗中だ。私の組合BTBは、スロバキアにある運輸関係のペーパーカンパニー50社のリストを欧州委員会へ提出した。これは、氷山の一角だ。だが回答は「対策の必要なし」。こうした事態が改善する兆しはない。

 また最近、欧州委員会が「労働者の海外派遣」指令の規制を若干強化しようとしたら、東欧諸国が反発した。彼らは、欧州の一員としてその恩恵は享受したいが、社会的に公平な欧州をつくる責任は負いたくないようだ。

▼離脱ではなく変革を

「もっと正確に私たちの政策を説かなくては」。英国の国民投票を受け、EUで雇用・社会問題などを担当するティセン委員はこう述べた。政治家は、人々が不満を述べたり行動に出たりするとこう言う。「間違っているのは一般人の方だ」とごう慢に決め込むのだ。

 反社会的なEUにノーと言える政治家や加盟国が今すぐ必要だ。離脱するのではなく、もう一つの欧州を追求するために。こうした理由から、交通運輸産業に最低賃金を導入しようとしているフランスとドイツは勇敢だ。どうしたら、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクも同じことができるのか。「EUはそんなことを認めない」と決め込むのではなく、今こそ自らに問い掛け、運命を変えるのだ。

 欧州労連とベルギーのナショナルセンターFGTBは長年にわたって、社会的に公平な欧州をめざす新たな政策を訴えてきた。私の組合はまた、交通運輸産業がより公平になるよう25項目の政策を立案している。例えば、社会的に労働基準を監督する「ユーロポール」制度の設立、ペーパーカンパニーの取り締まり強化、ソーシャルダンピングに関与する荷主の共同責任を問う法律の導入などだ。 選ぶのは、政治家たちだ。現状維持を選択し、もっと多くの人たちが欧州を唾棄する道を進むのか。それとも、社会的に公平な欧州をつくるのか。(6月26日 記) (連合通信)


府職労ニュースインデックスへ