京都府職員労働組合 -自治労連- Home 情報ボックス 府政NOW 京の写真館 賃金 料理 大学の法人化



2016年12月21日

本当は怖い副業のはなし
政府・マスコミは歓迎するが…

政府の「働き方改革」でも検討

 政府は、兼業・副業で仕事をする人を増やそうとしています。社員に推奨する企業もあり、マスコミは好意的に報じています。政府の「働き方改革」でも検討項目に上がっています。しかし、この動きの背景には労働法制で保護されない「個人事業主」的な働き方を拡大する狙いがあるとの指摘もあります。

▼副業よりも本業の環境改善を

 都内IT系企業に勤めるAさんは休日を使ってデザインの仕事を請け負っています。「本業だけだとスキルアップができない。転職のための準備と思って、自分の裁量でできる副業で技術を磨いている」と言います。

 国の副業推進については「やりたい人は推進されなくてもやっているし、まともな対価を払う副業であれば、雇う企業の方に多くのコストがかかるのでは」と首をひねります。

 大手の新聞社を退職し、今は出版社で働きながら別の仕事もこなす50代男性のBさんは「副業奨励より、本業の労働環境改善を」と訴えます。出版社ではフルタイムで働いているのに雇用関係はなく通勤手当も出ない状況。「〃身分はフリーだから副業はご自由に〃と社長は言いますが、生活のためにプライベートの時間を削っているという徒労感しかないのが実態」と漏らしています。

▼労基法守れば副業拡大は困難

 国は副業の市場を広げようとしていますが、実は副業の拡大は雇用する側の企業にとって負担が大きいという側面があります。

その理由は割増賃金です。労働時間は企業ごとではなく、人単位で計算するのが労基法のルール。つまり、本業で8時間働いた後、同じ日に副業先で働く場合、この副業先の企業には25%の割増賃金を支払う義務が発生するのです。この労働時間通算の仕組みは、企業にも労働者にもほとんど知られていません。

 副業先企業に「労基法をきちんと守る」という意識がある場合は、副業する人を雇うための人件費が高くなるため、簡単には副業を推進できないはず。副業は長時間労働を助長しやすく、夜間の労働を規制する仕組みもありません。国の副業推進は長時間労働の規制や過労死対策などにも矛盾しています。

▼骨抜きにされる労働法制

 兼業や副業を奨励する声が増える背景に「個人事業主的な働かせ方を増やす意図がある」と指摘するのは、伍賀一道金沢大学名誉教授(労働政策)です。

兼業・副業の労働者の労働時間管理や36協定のあり方、社会保険料の負担などの問題をクリアするのは難しく、「結局、個人事業主化するしかないという議論に誘導するのではないか」と分析しています。

経済産業省は10月、副業や兼業、フリーランスなどを想定とした「雇用関係によらない働き方に関する研究会」を立ち上げました。こうした動きについて伍賀教授は「個人事業主に転換すれば、労基法や最低賃金法、労働組合法、労働契約法などの労働法制が適用されないのだから、使用者にとっては誠に使い勝手がいい」と指摘。「労働法制は重大な局面を迎えている」と警鐘を鳴らしています。(連合通信) 

府職労ニュースインデックスへ