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2016年08月.08日

「福島がドイツを変えた」
ドイツ連邦議会副議長

安全で省コスト、雇用創出も

 元ドイツ緑の党党首で、ドイツ連邦議会副議長を務めるクラウディア・ロート氏が7月30日、訪問先の福島市内で会見を開き、ドイツが脱原発に舵(かじ)を切った経緯や意義を語った。再生可能エネルギーの可能性を話す時は力強く、日本の原発輸出に話が及ぶと、厳しい表情で翻意を促した。(文責・編集部)
     ◇

 ――なぜ脱原発が実現できたのでしょうか?
 1986年に起きたチェルノブイリ原発事故の際は「社会主義国のオンボロ原子炉だからで、ああいう事故はドイツでは起きない」と言われた。それが福島の原発事故で「世界有数の技術を持つ日本でも起きた。原発は制御できるものではない」との認識が広がり、世代を超えた10万人以上の人々がデモに参加。脱原発に再び舵を切る契機となった。福島の事故がドイツを変えた。

 日本は国民が勤勉で、技術力が高い。5年前に恐ろしい事故を経験したのになぜ原発を使い続けるのか、全く理解できない。日照量が多く、風力や潮力発電を可能にする約3万キロの海岸線を持ち、地熱発電が有効で、森林が国土の3分の2を占めるというバイオマス発電の条件もある。高い技術を持つ日本こそ、制御不能な原子力を脱し、最先端の再生可能エネルギーの力を世界に向けて証明できる国なのではないか。

 ドイツは6年後に完全に原発を停止する。今や電力量の36%を再生エネでまかない、新たな雇用を創出している。昨年の就労者は35万5千人。安全で、かつコストも抑えている。太陽、水、風はどれだけ使っても請求書は送られてこない。

 ――日本は脱原発どころか、原発の輸出に活路を見出そうとしています
 やめていただきたい。世界には原子炉が441基ある。テロに十分な備えができる原発はない。責任ある政府は原発輸出をビジネスにしてはならないと思う。

 「平和利用だからいい」という主張もあるが、軍事利用との境界は曖昧だ。イランの核問題は長い時間を経てようやく合意にこぎ着けた。悪用しようとする人の手に渡らないようにするためにも、原発を増やしてはならない。

 日本は原子力の怖さ、破壊力を象徴する国。平和利用でも事故が起きた。「核と人類は共存できない」ということをはっきりと世界に伝えていただきたい。

 原子力は制御できず、燃料のウランは有限でコストも高い。近視眼的にではなく、持続可能な視点で考えていくことが必要だ。

 ――国内でどう合意を形成したのですか?
 約30年の脱原発運動を経て、98年に社民党と緑の党の連立政権(シュレーダー政権)が発足し、段階的な脱原発路線を示した。大企業や電力会社は反対した。原発はお金を印刷する輪転機のように稼いでくれていたからだ。

 労組は「雇用が大事」と抵抗した。金属製造業の労組IGメタルは保守的で、保守政権に強い影響力を行使した。中道右派政権のメルケル首相は10年、ついに脱原発路線を撤回した。

 ところが、福島での事故後、脱原発の世論が再び高揚する。ポルシェやメルセデスなど大企業の本社があるバーデン・ビュルテンベルク州で、初めて緑の党の州首相が誕生し、メルケル首相は「脱原発の撤回」を撤回せざるを得なくなった。選挙で結果を示したことが大きなポイントとなった。

 ――その教訓は?
 大企業は政治的利害と結びついているので巨大な力を発揮する。そのため、エネルギー供給の分散化を進め、電力会社による独占体制や権力構造の打破をめざした。

 今や150万人が、地産地消で電力を生み出し消費する「プロシューマー」(生産消費者)の役割を果たしている。これが大きな成功をもたらした秘訣(ひけつ)だ。小さな自治体でも農家がエネルギー供給に参入、独占体制への依存を減らし、脱原発推進の力となった。

 もう一つが再生エネに市場競争力をつけること。ドイツでは大規模な初期投資を行うことで競争力をつけてきた。

 次の事故の心配をする必要がなく、安心でクリーンなエネルギーが今ほど求められている時はない。同じ工業国である日本とドイツこそ、最先端の技術開発で世界に貢献できるということを強く訴えたい。(連合通信)


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