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2016年10月11日

武器輸出をとりまく「現実」
経済ニュースの裏側
「日経ビジネス」を読んで

 「現実」っていったい何だろう。『日経ビジネス』9月26日号の特集「ニッポンの防衛産業」を読んで考えた。

 防衛産業をめぐる多角的取材はさすがで、教えられることも多かったが、「現実を見据えた建設的な議論」を呼びかける結論には違和感が残る。その趣旨を編集長は、「私も戦争やテロのない、平和な地球であってほしい」としつつ、「だからといって、現実から目を背けていては何の解決にもなりません」と強調するが、ここに、(武器輸出反対論などの)平和主義は現実を見ない理想論だというステレオタイプを感じてしまう。

 たしかに、2014年に政府が武器輸出を解禁してから、防衛産業には「追い風」が吹いているかのようだ。だが、目を凝らすと「別の現実」も見えてくる。

 世界の武器市場は米国、ロシア、中国、フランス、ドイツが寡占。割高で価格競争力がなく、装備品に(幸い)実戦経験もない日本企業に、寡占市場に割り込む見込みは乏しい。

 6月にフランスで開かれた防衛装備見本市「ユーロサトリ」を同特集は大きく取り上げたが、前回出展した国内大手6社のうち5社は、参加を見送った(「東京新聞」6月20日付)。オーストラリアの潜水艦の受注で、官民一体で臨んだ日本勢がフランスに勝てなかった一件も、記憶に新しい。

 それに加え、安倍政権下で、米国からのFMS(対外有償軍事援助)が急伸し防衛予算を食っていることも、国内企業には懸念材料だ。「日経ビジネス」も若干言及しているが、FMSは前金制で装備の到着は遅れがちな上、米国内で1~2億円とされる水陸両用車に7億円取られるなど、ボッタくりまがいなのである。

 こうした「現実」は、防衛産業への傾斜が日本にとって得策でないことを強く示唆している。

 米国では、「回転ドア」で政権に入り込む軍産複合体の荒稼ぎの陰で、元米兵(退役軍人)は1日平均20人も自殺している。戦争が産業になったことの代償は苛烈だ。

 稲田朋美防衛相が武器輸出解禁後、三菱重工など防衛関連大手の株を購入していた(夫名義で)ことも見逃せない。愛国的掛け声の裏で私利を得るのは誰か。為政者に「不都合な真実」を伝えてこそ、報道の名に値する。(連合通信) 

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