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2016年11月01日

自衛隊を南スーダンに送るな
青森市で市民集会

全国から1250人が参加

 青森市で10月30日、「自衛隊を南スーダンに送るな!いのちを守れ」と訴える集会が開かれ、全国各地から1250人が参加した。主催したのは、戦争法廃止を求める青森県民ネットワークと、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会。

▲愛する息子殺させない

安倍政権は11月11日にも戦争法に基づき、「駆け付け警護」などでの武器使用任務の付与を決定し、青森市の陸上自衛隊第9師団第5普通科連隊を中心とした部隊を20日から、内戦状態の続く南スーダンに送ろうとしている。県九条の会共同代表の神田健策さんは「戦前、貧しい東北の農村の青年が戦争に駆り出されたことを想起させる。国民にまともな説明もせず戦地に送るなど、許してはならない」と訴えた。

 総がかり行動実行委員会共同代表の高田健さんは南スーダン情勢を報告し、「何が何でも自衛隊を送り出そうとするのは、戦争法による、海外での戦争の最初の実験場にしようとしているからだ。そのために自衛隊員の命を差し出そうとしている。反対の声を全国で上げよう。安倍政権を打倒するため、市民と野党の共闘を発展させよう」と呼び掛けた。

 北海道から駆け付けた自衛官の母親・平和子さん(仮名)は、「くだらない戦争のために愛する息子を殺されてたまるかと声を上げています。青森の皆さんもおかしいことはおかしいといいましょう」とアピールした。

▲みんなで声上げよう

 民進党の升田世喜男衆院議員、日本共産党の高橋千鶴子衆院議員、社民党の三上武志県連代表らもあいさつ。「核兵器全面禁止条約の交渉に反対して、何が国際貢献か。日本がやるべきは憲法に基づく平和への努力だ」(高橋議員)などと表明した。7月の参院選挙で野党統一候補として当選した田名部匡代議員(民進党)は「私に託してもらったのは、平和と命を守ってほしいという願い。決して誰の命も奪わない、失わせない」と、力を込めた。

「ママの会@青森」の女性たちは子どもと一緒に舞台に登壇し、「青森はこれまで原発も核燃施設も基地も押し付けられてきた。でも、参院選挙で県民はノーの声を上げた。みんな今の政治はおかしいと感じている。その声で南スーダンから撤退させよう」と呼び掛けた。

 集会は最後に、青森ねぶたばやしの「ラッセーラー、ラッセーラー」の掛け声に合わせて、「自衛隊を戦地に送るな」「自衛隊員の命を守れ」「戦争法は今すぐ廃止」などのコールを響かせ、市内をデモ行進。沿道では市民がデモを見つめ、手を振って応えていた。

時の問題/駆け付け警護は必要か?南スーダン派遣の陸自部隊

 政府は南スーダンに派遣する陸上自衛隊に、「駆け付け警護」などの新任務を付与する方向です。「戦死」の危険が高まるのに、いまだに「リスクは増えるわけではない」(10月12日、稲田朋美防衛相)という答弁を繰り返しています。社会文化法律センターや自由法曹団など法律家6団体の院内集会(10月27日)の内容を基に、この問題を考えてみました。

▲南スーダンPKOって?

 南スーダンはアフリカ中央部に位置し、2011年にスーダンから分離独立しました。古くは、19世紀にエジプトが旧スーダン北部を、英国が南部を統治していました。1970年代に南部で油田が発見されて以降、独立機運が一層高まり、内戦を経て、11年に新国家が樹立されました。

 同年、当時の野田政権がPKO(国連平和維持活動)への自衛隊部隊派遣を決定。首都ジュバ近郊で、道路整備や避難民への医療活動、避難民保護区域の整備を行ってきました。(陸自の南スーダン派遣に反対する院内集会では、「戦死」の危険がにわかに現実味を帯びてきているとの強い憂慮が各識者から示された)


 13年から内戦状態になりましたが、昨年8月に和平合意。ところが今年7月、大統領派と副大統領派の間で戦闘が勃発。約300人が犠牲になり、現在も戦闘が散発的に起きています。

 政府は10月、陸自の派遣を3月末まで延長することを決定。11月初旬にも、国連職員や民間人、他国軍の救助に向う「駆け付け警護」と、宿営地を他国軍と「共同防護」するという新任務を付与する方向です。昨年強行成立された安保法制(戦争法)に基づく任務です。

▲これが積極的平和主義?

 政府は新任務を「積極的平和主義」に基づく活動と説明しています。「平和のため」を強調しますが、効果は疑問視されています。

 現地では今夏、政府軍部隊がホテルを襲撃し、民間人が殺傷される事件が起きました。近隣のPKO部隊は救援要請を拒否。地の利があり、国連を敵視する政府軍と、それを支持する民兵らに銃口を向けることは、非常に危険だからです。PKOの限界を超えているともいわれます。

「積極的平和主義」の言葉の使い方も間違いです。清水雅彦日本体育大学教授(憲法学)は「戦争をなくすだけでなく、構造的暴力を非軍事でなくそうという概念で、紛争の背景に貧困があるならば、その根絶を図ろうという考え方。新任務付与を急ぐ安倍政権は『積極的軍事主義』というべきだ」と批判します。

▲危険じゃないの?

「駆け付け警護」「施設の共同防護」はともに相手との交戦の可能性があるため、危険の度合いは格段に高まります。政府は危険の増大は認めず、「永田町に比べればはるかに危険だ」(安倍首相・10月12日、衆院予算委員会)とはぐらかすばかりです。
 新任務は治安維持活動に当たるといいます。イラク戦争時に陸上自衛隊が給水活動を行ったイラク・サマワでは、治安維持を担ったオランダ軍に戦死者が出ています。

 稲田防衛相は「任務が増えるからその分リスクが増えるというわけではない。リスクは1足す1イコール3という足し算で考えるようなものではない」と答弁しました。

 これに対し、元防衛官僚の柳澤協二さんは「こちらが武器を使えば相手も使う。戦闘は相互作用。思惑通りには進まない。危険の質が全然違う。1足す1が200にもなる、そういう性質の問題だ」と厳しく批判します。

 そのうえ、隊員の武器使用では、誤射すれば殺人罪に問われる可能性もあります。一瞬の判断が生死を分ける戦場で、大きなハンディを負わせたまま送り込もうとしているのです。憲法が想定していない軍事活動を担わせることの矛盾です。

 柳澤さんはこう警告した上で、「現場に一番しわよせしたまま、やらせようとしている。憲法違反で、欠陥法律の安保法制を使わせてはならない」。

▲戦闘ではなく衝突?

 国会では、内戦が発生しているとの追及に対し、政府は「戦闘ではなく、勢力間の衝突だ」と繰り返し強弁しました。なぜこんな変な答弁をするのか。それは、「戦闘」と認めると、PKO参加5原則((1)停戦合意(2)当事者の受け入れ同意(3)中立的立場の厳守(4)撤収が可能(5)武器使用は最小限)違反が明らかになるからです。

「ジュバは比較的落ち着いている」「現場レベルの偶発的なもの、組織的でない」「法的な戦闘行為ではない」など、耳を疑うような詭弁(きべん)が国会で飛び交っています。

 柳澤さんは「一番大事なことは戦闘状態にあるということ。PKO派遣要件をとても満たしているとはいえない。政府は自分の作った法律の定義に引きずられて、現実を見られなくなっているのではないか」と憂慮します。

 現実を見ない政府の姿勢は、許されるものではありません。

▲日本に求められるのは?

 では、日本に求められていることは何でしょう? 9月に現地で支援活動を行った、日本国際ボランティアセンター(JVC)の谷山博史さんは「現地では日本の自衛隊について知っている人はほとんどいない。今工事が停止している、国際協力機構(JICA)によるナイル川の架橋など、日本の民生支援に高い信頼が寄せられていると聞いている。そういう信頼が(新任務で)損なわれてもいいのか」と述べます。

「NGOの保護」という言い分についても、「私たちのように国の援助を受けていない団体は、目立たないように現地で活動している。何かあった時のために契約しているのは民間の警備会社。『NGOは駆け付け警護を求めてはいない』ということを強く言いたい」。

 さらに、平和貢献のあり方を考え直すべきとし、こう語ります。「日本は(対立している)キール大統領とマシャール前副大統領の双方と話ができる。欧米諸国とは全然違うところだ。それこそが日本の強みではないか」

▲なぜ急ぐ?

 自衛隊員の命に直結する課題が山積しているのに、政府はなぜ新任務の付与を急ぐのでしょうか。

 清水雅彦日体大教授は「まずは安保法を発動させることに狙いがある」と指摘します。戦争法反対の運動では、おもに他国の戦争に加担する集団的自衛権行使への強い危機感が叫ばれてきました。現政権でもいきなりそれをするのは難しいため、まずは世論に受け入れられやすいPKOでの実績づくりを急いでいるという指摘です。

 自衛隊員は日本国憲法の下、「専守防衛」の範囲で活動し、災害救助活動も担ってきました。日本の防衛とは関係なく、活動の大義や効果が疑問視される危険な活動に従事させてはなりません。

 日本は戦後、一発の銃弾も海外で撃ってきませんでした。今回の新任務付与は「戦後日本の岐路」とも指摘されます。現実を直視せず、なし崩しに軍事活動を広げる愚を繰り返していいのでしょうか。連合通信) 

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