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2016年04月04日

問われる会社側の初期対応
〈サントリーパワハラ事件〉

復職に向け続く闘い

 大手飲料メーカー「サントリーホールディングス」でパワーハラスメントを受け、病気休職中の労働者が復職を求めて闘っている。労働基準監督署、裁判所、労働委員会がパワハラや労災を認定しているにもかかわらず、会社はその事実を認めようとせず、復職も拒み続けている。男性は「愛着のある会社であり、今後も働き続けたい。なぜ復職を認めようとしないのか」と訴えている。紛争が長引くのは、会社側が初期対応を誤ったことが大きい。パワハラ問題での教訓という視点で、サントリーの事例を紹介する。

▲当該上司が休職を妨害

 男性は入社以来、製造管理などの仕事に携わってきた。

 2007年1月、上司に会議室に呼び出され、年末に取った年休について激しく叱責された。数カ月前から伝えていたが、上司が指定した書類を出さなかったとの理由で長時間にわたり責められ、男性が泣くまで続いた。それ以降、他の社員のいる前で「何で分からない。おまえは馬鹿」「新入社員以下だ。もう任せられない」など大声で叱るなど、人格への非難や嫌がらせが頻繁に続いた。

 業務でも過重な負担を強いられた。その頃進めていたシステム開発の納期を、突如短縮するよう指示された。納期に間に合わせるため、午前0時ころまで会社で残業する勤務が続いた。

 心身共に追い詰められた男性が心療内科を受診したところ、重度のうつと診断され、直ちに休職するよう医師に告げられた。上司に診断書を見せて休職を願い出ると、「いま(男性の)異動を考えているが、休職すれば異動させられない」と言われた。つまり、(1)休職した場合は復職後に再び同じ上司の部下になる(2)休職を取り下げて異動する――という二者択一を迫られた。男性はこれ以上のパワハラに耐えられなかったので、休職せず異動する旨を後日伝えた。

 しかし別部署に異動した後も男性の机は元上司と同じフロアにあるなど、会社側の配慮はなかった。結局男性の症状は改善せず、再び医師の診断書を受けた上で約1年間休職した。

▲通報窓口がもみ消し?

 男性は復職後、元上司の責任を追及し職場での再発を防止するため、同社の社内通報制度を利用してパワハラの事実を訴えた。

 訴えを受けた同社コンプライアンス室は、男性や元上司などに聞き取りを行った。しかし結果は「パワハラには当たらない」というものだった。男性は同室長から「パワハラと認められるためには(元上司に)故意や悪意がなければならない。それを立証できるか」などと言われた。

 弁護士に相談して協議を申し入れたが、会社の姿勢は変わらなかった。再発防止策を講じるどころか、パワハラをなかったことにしようとするかのような対応に対し、男性は12年6月、元上司とコンプライアンス室長、および会社の3者を相手取り東京地裁に提訴。並行して労基署に労働災害を申請した。

復職に向け続く闘い

 三田労働基準監督署は精神障害の労働災害だと認定。さらに14年7月の東京地裁判決では、不法なパワハラと認め、元上司と会社に損害賠償を命じた。一方、コンプライアンス室の対応については室長個人に違法性はないとした。

 会社側は控訴したが、高裁判決でも基本的な判断は変わらず、最終的に会社と元上司は男性に165万円の損害賠償を支払った。

▲会社は復職を拒否

 裁判でパワハラを断罪されたにもかかわらず、会社側には非を認め再発防止に努める姿勢は見られない。

 原告男性は、在職で裁判を継続するなかでうつ症状が悪化し、再び休職。労基署はパワハラによる労災延長を認定した。労災休職中の解雇は違法であり、男性は療養・回復後の復職を強く求めるが、会社側の対応は極めて冷淡だ。高裁判決前の和解勧告に対しても「退職しないのなら応じない」と回答。労災に連動すべき社内の「災害補償規定」の適用も拒み続けている。

 裁判所や労基署の決定を無視し続ける会社に対し、男性は「東京管理職ユニオン」に加入し復職に向け団体交渉を行った。会社側の姿勢が変わらないため組合は東京都労働委員会に不当労働行為(不誠実団交)を申し立てた。今年2月、都労委は復職を前提とした和解勧告を行ったが、会社はこれも拒否している。

▲誤り認め再発防止を

 厚生労働省が作成したパワハラへの対応マニュアルでは、再発防止に向けて行為者の懲戒処分や被害者の配置転換などの具体策を列記。社内相談窓口での対応について「『その程度のことはよくあること』など、相談者に共感を示さない言葉は厳禁」と記されている。今回のサントリーの対応は、これらを全て無視している。 
      
 東京管理職ユニオンの鈴木剛委員長は「男性はパワハラに加え、会社の配慮のない対応で二次被害を受けている。会社はまず誤りを認め、謝罪の意を表明するべき」と指摘。問題の解決や再発防止に後ろ向きな同社の姿勢を批判した。

 男性は「同様のパワハラでうつになり、自分を責め続けている同僚もいます。同じように苦しんでいる人が、こうした苦境を甘んじて受け入れるべきなのか、考えるきっかけにしてほしい」と訴えている。(連合通信) 

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