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2016年03月28日

始まったか、非正規賃上げ
〈働く・最前線からの告発〉ジャーナリスト 東海林智

「底上げ・底支え」が一定前進

 3月16日の集中回答を迎え、16年春闘序盤戦の結果が明らかになった。自動車、電機など相場をけん引する金属労協はおおむね1500円前後のベアで決着した。

▲正規上回る回答も

 メディアは、前年との比較と分かりやすい数字に飛びついた。今春闘の評価については、今後の数字も見たいのでここでは詳述しない。ただ、過去最高水準の企業収益をあげる中での低額回答だったことは、「労働側に追い風が吹いている」とまで述べた黒田東彦・日銀総裁の言葉と共に覚えておきたい。

 ベアと共に今春闘のテーマである「底上げ・底支え」はどうだったか。序盤の回答ではあるが、正社員を上回る非正規の賃上げを獲得したケースが報告された。トヨタは期間労働者の日給150円の引き上げなど正規を上回り、情報労連でも正社員を上回る非正規賃金の引き上げがあった。

 底上げの取り組みを大きなテーマにしたことが功を奏しているのではないか。もちろん、労働力不足が始まる中、人手を確保したい企業側の意向に合致したこともあろう。金属労協のある産別の幹部は「金属系の組合で正社員を上回る非正規の賃上げなんてこれまでは考えられなかった」と打ち明けた。今春闘で、これまでスローガンに過ぎなかった「すべての働く者の春闘」が動き出した感がある。

▲時給1500円に期待

 一方、非正規の底上げを巡っては、当事者たちも動き始めた。労働問題を軸に「不公正」の是正に取り組んでいる若者や学生らのグループ「AEQUITAS(エキタス)」のことだ。時給1500円への最低賃金引き上げを中心に運動を展開している。3月20日に新宿駅東口で行った街頭宣伝では、「最賃上げろ」のプラカードなどを手に若者らが集まり、訴えに耳を傾けた。
 メンバーの栗原耕平さんは「最低賃金が1500円になれば、最低限の人らしい暮らしができ、やりたい仕事を(生活できないからと)諦めなくて良くなる」と声を絞った。

 彼の言葉を、20代のカップルが熱心に聞いていた。2人とも非正規で働いている。低賃金で生活が苦しく、子供を作るかどうかでけんかが絶えないという。偶然、新宿に来て、街宣に足を止めた。男性は「未来に希望が持てなかったが、1500円になるなら希望が持てる。そのために自分もできることがあるのか考えたい」と話した。その手には、デモを呼びかけるエキタスのフライヤーがしっかりと握られていた。(連合通信) 

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