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2016年02月29日

最賃1500円めざして
全国でキャンペーン開始へ

首都圏青年ユニオンなど

 非正規労働者の賃金引き上げを求める「最低賃金大幅引き上げキャンペーン」が全国で始まる。中心となるのは首都圏青年ユニオン、下町ユニオン、全国一般労働組合東京南部らでつくる委員会。全国の労働組合に諸行動への参加を呼び掛けている。

「最賃時給1500円をめざして。いますぐどこでも1000円に」をスローガンに掲げ、当事者の声を発信していく。

 首都圏青年ユニオンの河添誠前書記長はキャンペーンの趣旨について、「ナショナルセンターの枠を越えて草の根で最賃引き上げの声を広げる初めての試み。非正規労働者の声を正規雇用で働く人々や労働組合にも届けたい」と語った。

 2月27日には東京新宿をはじめ全国15都道府県でアピールを行い、「生活できるまともな賃金」を訴える予定だ。

 2月23日の記者会見で町田市の男性(34)は、最賃ぎりぎりの時給で8年間働いてきた生活について語った。ユニオンへの相談を通じて団体交渉を行い、社会保険加入など労働条件を改善させ、未払い分の残業代も払わせることができた。

「非正規労働者には不当な条件でも上の決めたことに従うしかない、というあきらめの気持ちがある。それでも声を上げれば状況を変えられるんだということを伝えたい」と話した。

 今年10月までを最賃大幅引き上げキャンペーン期間とし、随時行動を行う。4月にはファストフード世界同時連帯行動、5月には「最低賃金を大幅に引き上げよう!院内集会」を開く。大手コンビニへの要請行動や、最低賃金違反の求人告発キャンペーンも予定している。

企業内最賃1500円/出版労連が要求

 出版労連は2月18日、都内で臨時大会を開き、2016年春闘方針を決めた。統一要求基準は「定昇込み7000円以上」とあわせて、企業内最低賃金の要求を1300円から1500円に引き上げた。「待ったなしの貧窮状態に置かれている非正規労働者の生活改善のため」と指摘。全単組が協定化に取り組むよう訴えている。

 出版労連に加盟している87組合中、51組合が企業内最賃を協定化している。水準はおおむね1400円程度だという。取次の現場で働くアルバイトの賃金は、東京都の最賃907円と同額。一日8時間・月25日働いても年収200万円に届かない水準で、抜本的改善が必要となっている。

 まずは地域別最賃引き上げの機運をつくろうと、今回、企業内最賃の取り組み強化を打ち出した。

訴えの核心部分を判断せず横浜地裁/神奈川最賃裁判で判決

 神奈川県の地域別最低賃金は生活保護水準を下回っているとして、神奈川労働局長に時給1000円以上の改正を義務付けるよう求めた行政訴訟の判決(石井浩裁判長)が2月24日、横浜地裁で出された。結果は門前払いの「却下」。訴えの核心部分については判断を避けた。原告団は控訴の方向で検討している。

 労働局長の決定が、抗告訴訟(公権力の行使に不服を訴える裁判)の対象となる「行政処分」に当たるかどうかが、焦点となった。判決は、決定が不特定多数の人々に適用されることを理由に行政処分に当たらないとし、訴えが裁判になじまないと判断した。(時給1000円以上の最賃改正を求めた裁判で、横浜地裁の判決は「却下」。報告集会では、原告らが控訴の意思を語った(2月24日、横浜市内)

 そのうえで、訴訟の要件である「(一定の処分がなければ)重大な損害を生ずるおそれ」の有無にも言及したが、判決は生活保護などの制度があるとして、そのおそれはないと付け加えている。

 最賃法は07年改正で「生活保護との整合性」が盛り込まれた。原告らは、最賃と生活保護を比較する国の計算方法が正当ではないために、実際よりも生活保護水準が低く算出され、同法に違反する状態が今も続いていると主張していた。この点について判決は一言も触れていない。

 判決後、原告側弁護士らは「判断を回避した判決」と批判。神奈川県の最賃と同額の時給で働くパート労働者の原告男性は、「同僚からは『頑張って』と期待されていた。これであきらめるつもりはない。高裁で闘っていきたい」と話していた。

〈解説〉国の主張をなぞっただけ

 国の主張をほぼ引き写したような判決である。原告らの主張の核心部には一切触れず、法技術論に終始した。裁判は門前払いという、原告にとって最悪の結果となった。とはいえ、当事者が自ら声を上げ始めた意義は小さくない。

 判決は、不特定多数に影響する処分は、抗告訴訟の対象になりえないとして門前払いにしたが、過去の裁判では認められた事案もあり、控訴審での判断が注目される。

 原告らが特に憤るのが、生活保護制度があることを理由に、重大な損害は生じないとした点だ。最賃が生活保護水準を下回るかどうかが問われた裁判なのに、生活保護があることを却下の理由とする感覚は理解しがたい。

 こうしたことをさらりと言えるのは、「最賃は低くて当然」という偏見があるからではないか。最賃決定の考慮要素である「健康で文化的な最低限度の生活」をどう考えているのか。働く者の賃金が生活保護水準より低くていいはずもない。この点は厳しく問うていくべきだろう。

 提訴から4年半。最大で133人もの原告団をつくり、18人の原告が時給1000円未満で働く厳しい暮らしの現状を法廷で陳述した。当事者が声を上げ始めた意義は特筆すべきである。

 今や安倍首相でさえ、日本の最賃が国際的に低く、1000円が必要と述べるまでになった。「いや、1500円が必要だ」という若者たちの運動も起きている。当時から「1400円超」を主張していた原告らのめざす方向に世の中が向き始めている。

「まともに暮らせる最賃を実現する」というたたかいはまだこれからだ。(連合通信)

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