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2016年03月07日

厚労省がなぜリストラ支援
人材会社利する助成金

被害男性が実態告発

 企業のリストラを手助けする人材会社のビジネスに国の助成金が使われているとして、国会で大きな問題になっている。再就職を促す「労働移動支援助成金」だ。3月3日に開かれた民主・維新の厚生労働合同部門会議では、製紙大手の王子ホールディングス元社員の男性(45)が人材会社のプログラムに沿ってリストラされた経験を語った。

▲行き着く先は人材会社

 男性は勤続20年以上のベテランだった。昨年11月に直属の上司から「今日の午後面談がある」と言われた。面談場所では、人事本部長と人事部長の2人から紙業界の景気低迷の話をされ、「リストラをしなければいけない。君には与える仕事がない」と告げられた。さらに早期退職に応じた場合、(1)会社都合による退職扱い(2)退職金の特別加算の上乗せ(3)人材会社による再就職支援――の3点を提示し、「再就職支援会社でまず話だけ聞いてきてくれ」と言われた。

 再就職支援会社で話を聞いたが、男性は退職を拒否。すると人事部長は「受けないならテンプスタッフに出向して、自分の再就職先を探してもらう」と言ってきた。

 つまり、(1)支援制度を受ければ退職の後にテンプスタッフで再就職支援(2)受けなくても結局はテンプスタッフへ出向――。どちらを選んでも結果は同じ。それならば、多少ともメリットのある支援制度を受ける、と男性は答えた。

 今年1月末で会社を退職し、現在無職だ。会社を退職したことは中学2年生になる娘には伝えていない。毎日スーツで定時に家を出て帰宅する生活を続けているという。

▲パソナ会長が仕掛け人
 2月22日の予算委員会で民主党の大西健介衆議院議員は、テンプスタッフの内部資料を明らかにした。リストラを企業に提案する営業資料だ。その内容は、3つの優遇措置など、男性が受けた内容とぴたりと一致する(図)。

 さらに問題なのは、こうしたリストラに対し「労働移動支援助成金」が支給されている事実だ。人員削減を行う企業が人材会社に再就職支援を委託した場合、委託した時点で1人につき10万円、半年以内に再就職すればさらに50万円を上限に支給するもの。解雇を行う会社から「委託料」の形で人材会社に流れるという仕組みである。

 元々は中小企業向けの補助金だったものが大企業にも拡大され、さらに13年の産業競争力会議での竹中平蔵パソナグループ会長の発言などを受けて日本再興戦略に盛り込まれ、急激に予算規模が膨らんだ。

▲これは氷山の一角だ

 3日の部門会議で大西議員は「黒字経営の企業にもかかわらず『リストアップ方式』と名付けて人材会社が退職強要を提案する。王子ホールディングスの事例は氷山の一角で、日本中で起きているのではないか」と指摘。民主党の山井和則衆議院議員は「国策として進めた助成事業が結果的にリストラを促進し、実際に人生を壊された人がいる。他の人材会社で同じことが起きていないか調査し、すぐやめさせるべき」と厚生労働省を追及した。

 日本労働弁護団の棗一郎弁護士は、「労働者には退職勧奨に応じる義務はなく、男性が受けたような退職強要は最高裁判例からも明らかに違法だ」と指摘した。

 厚労省の北條憲一・職業安定局雇用開発部雇用開発企画課長は「違法な退職強要に対しては助成金を支給すべきでないとの大臣答弁がある」としつつ、「直ちに不正受給ということはできない」と述べていた。
 税金を使ってリストラし、人材会社がもうかるという仕組みを許すのか。徹底した究明が必要だ。(連合通信)。

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