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2016年03月22日

「会社は痛み知るべき」
リストラ丸投げ

製紙大手「王子」元社員が訴え

 「今でも会社は好きですが、上層部はもっと社員の痛みを知るべきです」――

 王子ホールディングス元社員の男性(45)はこう話す。男性は勤続20年のベテランだったが、昨年11月にリストラ対象だと告げられ、人材会社テンプスタッフでの再就職支援を勧められた。いったんは退職を断ったが「その場合はテンプスタッフに出向して自分の仕事を探すことが仕事になる」と言われ、退職に追い込まれた。男性に詳しく話を聞いた。

▲見えにくい退職強要

 リストラを告げる際、会社はあえて別フロアの部屋を面談場所に指定した。「(社員同士の)横のつながりを警戒したのだと思います。ピンポイントで潰しに来た。リストラ対象になったこと自体『恥ずかしいこと』です。社内では誰にも相談できませんでした」

 会社からは退職金加算や人材会社での再就職支援などの優遇措置を示され、「とりあえず話だけでも聞いてきてくれ」とテンプスタッフに行くよう指示された。同社では「1年後の再就職率は94%」などと説明を受けた。

 自宅で妻に相談したところ、妻自身再就職が困難だった経験もあり退職受け入れには反対だった。「(中学2年生の)娘に無職の父親の姿を見てほしくない。辞めないで」と言われた。

 会社に退職するつもりはないと伝えると、「ではテンプスタッフで再就職先を探すことが仕事になる。退職金加算などのメリットも受けられない。それでもいいのか」と言われた。事実上選択の余地はなかった。男性は退職を受け入れざるをえなかったという。

▲会社とテンプは共犯

 「痛みを知らないままに人を切れるのがリストラのアウトソーシング。会社とテンプスタッフは共犯関係にあります」と男性は指摘する。会社はリストラを人材会社に丸投げすれば自らの手を汚さずにすみ、職を失った社員は再就職を求める顧客として人材会社の利益となる。そこに国が助成金をつけているのだから、人材会社にとってはまさに濡れ手で粟(あわ)だ。

 男性によれば、会社は昨年7月にも27人の社員に同様の手法で退職を迫り、26人が退職。うち再就職が決まっているのは2人だけだという。会社に残った1人はテンプスタッフで今も9時から5時まで自らの出向先を探し続ける毎日だ。

 「数字だけを見て短期的な利益のためにリストラを丸投げする会社の上層部は、社員の痛みに共感する感覚がまひしている。こんなやり方は、会社の将来にとっても決してプラスではないと思います」(連合通信) 

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