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2016年02月02日

未経験者が2、3回の研修をして乗務
〈軽井沢バス事故が問うもの〉上

「安全」破壊した規制緩和

 15人が死亡し、26人が重軽傷を負った軽井沢スキーツアーバス事故。2012年の関越道バス事故を受け安全対策が強化されたはずなのに、なぜ惨事が繰り返されたのか。その背景には何があるのか。現場の観光バス乗務員の立場からこれまでも提言を続けてきた、自交総連バス部会のメンバーに話を聞いた。

▲「経験」軽視が常態化

 服部一弘部会長は「バス業界にとって『経験』こそ財産。それを事業者が怠った」と述べこう指摘した。

「マイクロバスしか運転したことがないドライバーに2、3回の研修をして乗務させたことが重大。事故時は時速100キロ近く出ており、ギアがニュートラルに入っていたというが、同じドライバーとして考えられないような状況。(ドライバーのほかに)補助乗務員をつけていれば防げた事故ではないか」

▲過当競争で運賃が下落

 元バス運転手で自交総連大阪地連書記次長の松下末宏さんは「このようなドライバーが乗務することは、規制緩和前ではありえなかった」と指摘する。

 2000年からの道路運送法「改正」により、貸切バス事業は事業区ごとの免許制から事業者ごとの許可制になり、参入規制が大幅に緩和された。規制緩和前の98年と10年を比較すると、事業者数はほぼ2倍に増えている一方、輸送人員は微増、営業収入は減少の一途だ(図)。

 限られた仕事を多数の事業者が奪い合う過当競争の激化で、運賃の低価格化が進んだ。規制緩和後にツアーバス事業を始めた「新規参入組」を中心に、コスト削減のための長時間労働や非正規化が進められ、今回の事故のように技術が未熟で経験が浅いドライバーが乗務するケースが増えるなど、安全性がないがしろにされていったという。

▲まじめな会社が割食う

 松下書記次長によると、バス会社が激しいダンピング(値下げ)競争を繰り広げるなかで、発注者である旅行会社の力が強まり、既存の路線バス会社がつくっていた安全のための「自社ルール」も壊されていった。

 近年ではインバウンド(訪日外国人旅行者など)の増加で観光バス需要が高まっている。しかし実態はバス事業者に低価格運賃を強いるブローカーが旅行会社との間に介在し、新たな仕事は新規参入組に流れるケースが多い。国土交通省の公示運賃を守っている既存の会社はむしろ「バスが空いている状況」(服部部会長)だ。まじめな企業に仕事が回ってこない、いびつな産業構造ができているのだ。(連合通信)

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