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2016年12月06日

9年後に583万人が不足!?
政府・経済界が焦り

「働き方改革」が必要な理由

 2025年には583万人分の労働力が不足――。日本経済新聞社主催のシンポジウム(11月29日、都内)でこんな試算が示された。不足解消のために生産性向上、女性や高齢者、外国人の就労を増やすことが提言された。企業側の焦りと、人材会社や政府の狙いをよく示している。

▲「週休3日」で人集め
 
 人材会社系パーソル総合研究所社長の渋谷和久氏は、9年後の25年には583万人の労働力供給不足が生じると指摘し、解消に向けた四つの方策を提言した。

 一つが労働生産性の伸び率を3割向上させることで、労働力需要を114万人減少させる。二つ目が30~64歳の女性就労をスウェーデン並みに引き上げ、350万人の供給増を実現すること。三つ目が高齢者を70歳まで働かせることで167万人増、四つ目が外国人労働者を倍増させ34万人増――という内容だ。 こうした問題意識は、働き方をめぐる政府の動きとも重なる。
 
 女性の就労については、配偶者控除の拡充、テレワーク推進、育児介護休業改善など矢継ぎ早に政策を打ち出している。高齢者は、生きがい就労の規制緩和や、年金支給開始年齢の再引き上げに踏み込む発言も与党内から出始めている。外国人は、技能実習生を増やす法案を臨時国会で成立させた。国が検討を始めた兼業・副業の解禁、個人請負の働き方拡大も、労働力の創出という視点から説明がつく。 

 企業の焦りも強い。「週休3日」の検討を打ち出して注目を集めたIT大手ヤフーの人事担当者は「激しい人材獲得競争を勝ち抜くには、プラスになることは全てやらないと企業は立ち行かない。選んでもらえるように会社が変わらなければならない時代だ」「人がいない。頭数がいない。いい人が来ない。この先10年をにらみ、有効な手なら何でも打つしかない」と内情を語った。

▲狙いは低位平準化
 
 「働き方改革」を掲げる以前から、安倍政権が一貫して推進してきたのが「雇用の流動化」だ。派遣大手テンプホールディング社長・最高経営責任者(CEO)の水田正道氏は「終身雇用制と年功賃金が依然根強く残っている。流動性阻害の一番の要因だ」と強調し、こう述べた。

 「社内評価と社外評価に非常に埋めがたいギャップがある。勤務先から1千万円をもらっている人が、社外では半分しか(価値が)ない。(政府が検討する)同一労働同一賃金はこの是正に動くのだろう。これは年功給の否定になる。とはいえ、20歳と50歳の人の給与を全く同じにするとはなかなかならない。実態と理屈にかい離がある。時間をかけて解決していかないといけない」。

 格差の低い方にならすという認識の表明だ。  同氏は日本人材派遣協会の会長。同協会は政権に強い影響力を持ち、昨年の労働者派遣法改悪強行、リストラ助成金の予算枠拡充を後押ししてきた。

▲労働移動で金もうけ
 
 さらに水田氏は「安倍政権が進めている雇用の流動化、成熟産業から成長産業への大規模な、失業なき労働移動を実現させることは、人材ビジネスに携わる者の大きな使命だ。雇用の流動性と雇用の安定、この相反するものをわれわれが両立させていきたい」とも述べた。  

 行き着く先は、個人請負を含む雑多な働き方が入り交じり、職業紹介の多くを人材会社が担う雇用社会。厚生労働省の審議会では、職業安定法改正を視野に、人材会社に有料職業紹介事業の商機を広げる規制緩和の審議がいよいよ大詰めを迎えている。 (連合通信) 

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